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フードカメラマンに必要なのは、カメラより食体験かもしれない

  • 執筆者の写真: 笙子 太田
    笙子 太田
  • 6月29日
  • 読了時間: 5分

こんにちは。インバウンド・海外展開特化のフードカメラマン、太田笙子です。


タイトルをみて、「え?!そんなわけある??!」と思ったかもしれません。

ちょっと言い過ぎ感もありますが、そう思わされる出来事がありました。


先日、少し変わった撮影のご依頼がありました。

撮影するのは料理そのものではなく、カクテルシェイカーやカクテルグラス。

バーやカクテル文化に関わるビジュアル制作のお仕事でした。


撮影前の打ち合わせでクライアントの方がこんなことをおっしゃったんです。

「普段ビールしか飲まないので、カクテルのことがよく分からなくて……。太田さんがお酒好きで良かったです。」

その言葉を聞いたとき、ふと思いました。

もしかするとフードカメラマンに必要なのは、カメラの知識だけではないのかもしれない、と。



カクテルを知らなければ、カクテルは撮れない

例えばカクテルグラスを撮るとき。

マティーニとモヒートでは、求められる空気感がまったく違います。

マティーニなら静かで洗練された大人の世界。

モヒートなら爽快感や開放感。

同じグラスの写真でも、「どんな場面で飲まれるものなのか」を知っているかどうかで、ライティングも構図も小物選びも変わってきます。


もちろん見た目だけを真似して撮ることはできます。

でも実際にバーで飲んだ経験があると、

「このグラスは手に持った瞬間に冷たさを感じる」

「シェイカーを振る音が心地いい」

「ライムの香りが立ち上る」

そんな感覚まで思い出しながら撮影できます。

写真は視覚の仕事ですが、実は味覚や嗅覚、聴覚の記憶が大きく関わっているのです。



なぜフードカメラマンは食べ歩きをするのか

フードカメラマンというと、カメラの勉強ばかりしていると思われることがあります。

でも実際には、食べ歩きをしている時間も仕事の一部です。

なぜなら、美味しさは写真だけでは学べないからです。


例えば高級寿司店に行ったとき。

カウンター越しに職人さんの所作を見たり、シャリの温度を感じたり、お店の照明の暗さや静けさを体験したりします。

そうした体験が蓄積されると、寿司の撮影を依頼されたときに「このお店らしさ」を写真に反映できるようになります。

逆に、ファストフード店の活気やスピード感も実際に利用しているからこそ理解できます。

食べ歩きは単なる趣味ではなく、食文化のリサーチでもあるのです。(けっしていいわけではないです笑)



なぜレストランに行くのか

料理写真を撮る仕事なのに、なぜわざわざレストランへ足を運ぶのか。

それは料理だけを見ていても、お客様の体験は分からないからです。

料理がお客様の前に運ばれる瞬間。

最初にどこを見るのか。

どんな会話が生まれるのか。

どの料理でスマートフォンを取り出すのか。

そうした「体験の流れ」を知ることが重要です。

私は海外向けの撮影も多く行っていますが、日本人と外国人では注目するポイントが違うことがよくあります。


以前、インバウンド向け写真のセミナーでもお話ししたのですが、日本人は全体の調和や余白を好む傾向があり、海外では主役が明確でインパクトのある写真が好まれることが少なくありません。

実際にレストランで食事をしていると、その違いを肌で感じることがあります。

だから私は撮影のためだけでなく、お客様の体験を知るためにレストランへ行きます。



なぜ旅行先で市場に行くのか

旅行に行くと、私はかなりの確率で市場へ向かいます。

観光名所より先に市場へ行くこともあります。

なぜなら、その土地の食文化が一番濃く現れている場所だからです。

どんな魚が並んでいるのか。

どんな野菜が売られているのか。

どんな色使いのパッケージが多いのか。

現地の人は何を買っているのか。

海外市場を歩いていると、日本では当たり前だと思っていた価値観が意外と通用しないことにも気づかされます。

例えば色の好み。

日本では上品とされる淡い色合いが、海外では物足りなく見えることもあります。逆に、日本人には派手に感じる色彩が海外では魅力的に映ることもあります。

こうした発見は、海外向けの商品撮影やインバウンド向けのビジュアル制作にそのまま活きてきます。



カメラの技術だけでは伝えられないものがある

もちろん、カメラの知識やライティング技術は大切です。

でも最近はAIも進化し、露出や色補正、画像加工の多くをサポートしてくれる時代になりました。

技術だけであれば、これからますます機械が代替できる部分も増えていくでしょう。

それでも人間のフードカメラマンが必要とされる理由があるとしたら。

それは食べた記憶や旅の記憶、人との会話や感動した体験を持っていることなのではないかと思います。

目の前の料理がどんな気持ちで作られたのか。

食べた人がどんな感情になるのか。

その背景にある文化や物語は何なのか。

そうしたものを理解した上でシャッターを切るからこそ、写真に説得力が生まれるのだと思います。

フードカメラマンの仕事は料理を撮ることではなく、食体験を翻訳することなのかもしれません。

インバウンド・海外展開特化のフードカメラマンとして、日本の食の魅力を世界へ伝えるビジュアル制作を行っています。



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