パリパリスイーツは「音」を撮る。食感を写真で伝えるための撮影設計、教えます
- 笙子 太田
- 5月19日
- 読了時間: 5分
こんにちは。
インバウンド・海外展開特化のフードカメラマン、太田笙子です。
少し前から、ある種類のスイーツが気になって仕方なくなっています。
ブリュレのキャラメリゼを割る瞬間。
チョコのコーティングが一気に砕ける断面。
カダイフ(パリパリの乾麺)とピスタチオを組み合わせたドバイチョコの、あのザクザクとした歯応え。
いわゆる「パリパリ系・ザクザク系」のスイーツが、ここ最近で明らかに存在感を増しています。
飲食トレンドを調査・発信する求人飲食店ドットコムの2025年版レポートによると、
2024年はザクザク食感が人気を集め、
2025年はさらに進化した「ハイブリッド食感」、
つまりパリパリ&もちもち、サクサク&ふわふわといった組み合わせが注目されると分析されています
(出典:求人飲食店ドットコム「飲食店が参考にしたい、2025年のトレンドグルメ」2025年2月公開)。
面白いのは、この食感ブームを後押ししている要因のひとつが「音」であること。
SNSのASMR動画(咀嚼音などを収音した動画コンテンツ)の普及が、食感そのものを購買動機にしているという流れです。
ただ、ここで大きな問題があります。
「パリパリスイーツは、普通に撮ると全く伝わらない」
今日は撮影の現場から、パリパリスイーツを"売れる写真"に変えるための設計をお伝えします。
パリパリは「動き」と「音」でしか感じられない感覚
パリッとした食感は、本来は音と動きで体験するものです。
割れる音、ひびが入る瞬間、断面が崩れていく様子。。。
これらは動画向きの情報であって、静止画では本来伝わりにくい。
だからこそ写真では、「その直前か直後を切り取る」ことが重要になります。
スプーンを入れた瞬間、割れた断面が見えている状態、破片が少し散っている状態。
この「途中感」を意図的に作ることで、見た人の脳内に音が再生される。
フード撮影において、これはかなり重要なテクニックです。
よく「完成形を美しく撮る」という発想で撮影に臨む方がいますが、パリパリスイーツに限っては逆効果になることが多いです。
「割る前」ではなく「割った後」が主役
ツヤのあるブリュレをそのまま撮る。
綺麗な状態を保とうとする。
これは一見正しそうですが、実はパリパリスイーツの価値を消してしまっています。
このジャンルのスイーツの魅力は「壊れること」そのものにあります。
だから、割れている、崩れている、中身が見えているという状態を「完成形」として設計する必要があります。
フード撮影は「料理を壊す仕事でもある」とよく言うのですが、まさにこのジャンルはその典型例です。
光は「硬さ」を演出するために使う
パリパリ感を出すうえで、光の設計は思っている以上に効いてきます。
ポイントは「柔らかい光」ではなく「やや硬めの光」を使うこと。
パリパリは硬い質感なので、光の性質もそれに合わせるというシンプルな発想です。
具体的には、斜め後ろから光を当てて、ハイライト(反射光)をしっかり出し、エッジ(輪郭線)を強調する。
これだけで「カリッ」「パリッ」という質感が視覚的に伝わってきます。
ふんわりした光を使うと、一気に「しっとり系スイーツ」に見えてしまうので、そこは要注意です。
断面が、すべてを決める
パリパリスイーツにおいて最も重要なのは、断面です。
キャラメリゼの厚みやチョコの割れ方、中のクリームとのコントラスト。
ここが見えて初めて、「美味しそう」から「食べてみたい」に変わります。
特に海外向けの撮影でこの傾向は強くなります。
インバウンド集客を目的とした撮影では、「中身が見える」「構造がわかる」という要素が購買行動に直結するケースを私自身何度も経験しています。
これはデータとも符合していて、
アルティウスリンク株式会社が2025年5月に発表した「購買行動におけるSNS利用動向調査」(対象:20〜79歳の男女3,714名)によると、商品購入前にSNSでの情報を確認したい人は全体の6割以上にのぼり、若年層では8割を超えているという結果が出ています。
飲食店や食品のECにおいて、写真の質が購買の入口になっているという事実は、この数字からも明らかです。
「音が聞こえそうな構図」を作る
少し感覚的な話ですが、これが一番大事かもしれません。
パリパリスイーツの写真としての完成度は、「音が聞こえそうかどうか」で決まります。
スプーンが少しめり込んでいる、ひびが走っている、破片が浮いている。。。
こういった細かい演出が積み重なって、見た人の脳内に「パリッ」という音が生まれる。
それはもう単なる料理の記録ではなく、体験の写真です。
インバウンド視点では「わかりやすさ」が命
日本では「繊細さ」「雰囲気」「余白」で美味しさを表現する文化があります。
でも海外では「わかりやすさ」「インパクト」「情報量」が重要になります。
パリパリスイーツの場合は特に、割れていること・中身が見えること・量感があること、
この3点をきちんと見せることが「何これ面白い」「食べてみたい」という反応に直結します。
インバウンドを狙うなら、日本的な「引き算の美学」をそのまま海外向けに使うのは少し危険です。
撮影の段階から、「誰に見せるか」を設計に組み込む必要があります。
まとめると、こういうことです
パリパリスイーツの撮影は、きれいに撮るだけでは成立しません。
壊す、見せる、想像させる。
この3つを意図的に設計してはじめて、「音が伝わる写真」になります。
フード撮影が単なる記録ではなく"体験設計"だと私がよく言うのは、こういうことです。
もし今、SNSで写真の反応が薄い、ECでなかなか売れない、撮ってみたけど普通に見えてしまう、というお悩みがあるとすれば、まず「食感をどう見せるか」という視点を見直してみてください。
写真は、味を伝える前に「期待値」を作る仕事です。その設計ができているかどうかで、結果はかなり変わってきます。
撮影のご相談はこちらからどうぞ。
株式会社Light&Green 代表取締役/フードカメラマン 太田笙子



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