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目を閉じると、なぜ料理は“味気なく”なるのか〜視界を断たれた状態で食べるとわかる、「食べる」は目から始まっているという話〜

  • 執筆者の写真: 笙子 太田
    笙子 太田
  • 49 分前
  • 読了時間: 4分

こんにちは。

日本の食を世界へ届けるフードカメラマン、太田笙子です。


みなさんは一度でも、目を閉じたまま食べ物を口に入れたことがあるでしょうか。

たとえば、普段大好きなショートケーキを目隠しして食べてみる。

もちろん甘さは感じます。生クリームのなめらかさもわかります。

でも、不思議なことに「いつもの感動」が少し弱く感じることがあります。

実はこれ、気のせいではありません・・!!


人は「舌だけ」で味を感じているわけではなく、視覚・嗅覚・聴覚・触覚など複数の感覚を脳の中で統合して、“美味しい”を作り上げていることが近年の研究でもわかっています。特に視覚は、味覚に大きな影響を与える感覚のひとつです。


私たちは思っている以上に「目で食べている」

料理が運ばれてきた瞬間。

まだ口に入れていないのに、

「美味しそう」

「濃厚そう」

「さっぱりしていそう」

そんな予想を無意識にしています。


実際、食品の色や形、盛り付け、光の当たり方などの視覚情報が、味の感じ方そのものに影響を与えることが報告されています。

例えば同じ飲み物でも、赤っぽい色だと甘く感じやすい。

緑色だと酸味を連想しやすい。

こうした「視覚と味覚の結びつき」は世界中で研究されています。

つまり私たちは、実際に味を感じる前から、目で味の予測をしているのです。


フード撮影は“美味しそう”を作る仕事ではない

私は普段、飲食店や食品メーカーの商品撮影を行っています。

撮影現場でよく感じるのは、

「料理そのものはすごく美味しいのに、写真になると魅力が伝わらない」

というケースです。


逆に、光の入れ方や構図を変えるだけで、

「なんだか急に美味しそうに見える」

ということも珍しくありません。


これは単なる見た目の問題ではなく、人間の脳が視覚情報から味を予測しているからです。

実際、食べ物の視覚的な魅力は味の評価や食欲にも影響を与えることが報告されています。

だから私は、料理写真を撮るときに「綺麗に撮る」ことよりも、「どんな味を想像させるか」を考えています。


湯気を見せるのか。

断面を見せるのか。

照りを強調するのか。

サクサク感を感じる角度にするのか。

写真は、味覚の予告編のようなものなのです。



海外向け写真で特に重要になる“視覚の翻訳”

インバウンド向けの撮影をしていると、この視覚の重要性をより強く感じます。

なぜなら海外のお客様は、日本語の説明文を読まないことも多いからです。

まず最初に見るのは写真。

そして写真だけで、

「美味しそう」

「楽しそう」

「行ってみたい」

を判断しています。

私は以前から、写真は世界共通の言語だと考えています。


実際、海外向けの写真では日本人向けとは異なり、コントラストや色彩、主役の見せ方などが重要になるケースがあります。

言葉が通じなくても、写真なら伝わる。

逆に言えば、写真で伝わらなければ、その料理は存在しないのと同じになってしまうこともあるのです。



目隠し実験が教えてくれること

もし今この記事を読んでいて少し興味が湧いたら、ぜひ試してみてください。

好きなお菓子や果物を用意して、目を閉じた状態で食べてみる。

そして次に、しっかり見ながら食べてみる。

きっと感じ方が変わるはずです。

食べ物は舌だけで味わうものではありません。

色も。

光も。

盛り付けも。

湯気も。

全部含めて「味」なのです。


だからこそ私はフードカメラマンとして、ただ料理を記録するのではなく、その料理が持つ美味しさの記憶や期待感まで写真に写したいと思っています。

料理写真は見た目を飾るためのものではありません。

人の脳に「美味しい」を先に届けるための、大切な入り口なのです。


お問い合わせはこちらからお願いいたします。


こちらの研究では、料理の見た目や盛り付けが食欲や味の評価に影響することが報告されています。

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