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海外では"黒い食べ物"が売れにくいって本当?フードカメラマン・太田笙子が考える「色と文化の翻訳」

  • 執筆者の写真: 笙子 太田
    笙子 太田
  • 20 時間前
  • 読了時間: 4分

こんにちは。インバウンド・海外展開特化のフードカメラマン、太田笙子です。


先日、海外向け商品撮影の打ち合わせでこんな相談を受けました。

「黒ごまの商品なんですが、海外でもこのまま売れるでしょうか?」

海外展開を考える食品メーカーさんからよくいただく質問です。

答えは「商品次第ではなく、見せ方次第」なのですが、その話をする前に、まず知っておいてほしい前提があります。


日本では日常的に食べられている黒い食べ物(黒ごま、ひじき、海苔、イカ墨、竹炭スイーツなど)が、海外では必ずしも同じように受け入れられるとは限らない、ということです。



日本人にとって「黒」は美しさの色

まず日本人の感覚から整理してみます。

日本において黒は、ネガティブな色ではありません。

黒塗りの漆器には高級感があり、高級和食店でも黒い器はよく使われています。海苔や黒ごまは日常の食卓に当たり前のように並んでいます。

上質、洗練、職人技、和の美しさ・・・日本人にとって黒はそういったイメージと結びついています。

私自身、料理撮影で黒い背景や黒い器をよく使うのも、料理が引き締まって見えるし、和食の高級感を演出しやすいからです。(黒色大好き人間です)



海外では「黒い食べ物」に別の印象を持つ地域もある

一方で、海外では事情が異なります。

アメリカでは黒い色に対して高級というイメージと同時に、死・不吉・失望などネガティブなイメージを持つ人もおり、生きることに直結する食事の中に死を想起する黒が入っていると食欲がそそられないという傾向があると指摘されています。(出典:livedoorニュース「海外から見た『食欲がわかない』日本の食べ物」2023年3月) Commercepick


海苔を初めて見た外国人が「なぜ紙みたいな黒いものを食べるの?」と驚くのは、見た目の問題だけでなく、こうした色彩感覚の文化差も影響しています。

また海外の方から見ると、海苔はまだ「よくわからない食べ物」であり、知らないものを好きになったり興味を持つことは難しいという現実もあります。(出典:ぬま田海苔 note「海外客への『海苔/nori』のススメ方」2023年11月) KEY COFFEE



ただし、「黒い食べ物は海外で売れない」わけではない

ここが重要な点です。誤解してほしくないのですが、黒い食べ物が海外でまったく受け入れられないわけではありません。

黒トリュフ、キャビア、イカ墨パスタ、竹炭アイスなど、これらは海外でも人気があります。

違いは何かというと、「黒さ」そのものではなく、「価値の伝え方」です。

黒トリュフは高級食材として認識されている。キャビアはラグジュアリーな世界観で見せられている。


つまり黒いことが問題なのではなく、「なぜ黒いのか」「どんな価値があるのか」が理解されるかどうかが分かれ目です。


黒い食材こそ「ストーリー」が必要

海外向けの商品撮影では、黒い食材ほど演出を丁寧に考えます。

黒ごまアイスを例にすると、日本人は健康的で香ばしい味を写真から想像できます。

でも海外のお客様は、黒ごまという食材をそもそも知らないことがある。

だから写真では、黒ごまの粒をしっかり見せる、断面を見せる、食べている人を入れるといった工夫をします。

竹炭スイーツなら、真っ黒な見た目だけで終わらせず、なめらかな質感、フルーツとのコントラスト、断面の美しさを意図的に見せる。

黒ごまなら、すりたての香りが伝わるような演出を加える。

「なぜ美味しいのか」を写真で説明する、という考え方が黒い食材では特に重要になります。


インバウンド時代に必要なのは「文化の翻訳」

農林水産省のデータによると、2024年のインバウンドによる食関連消費額は2.3兆円で過去最高を記録しており、日本食への海外からの関心は確実に高まっています。(出典:知的財産戦略推進事務局「クールジャパン戦略の推進」2026年3月) ECnomikata


ただこの市場の大きさは、同時に「正しく伝えれば売れる可能性がある」ということでもあります。

海外展開の仕事をしていて感じるのは、商品を翻訳するだけでは足りない、ということです。

必要なのは文化の翻訳です。

日本人には当たり前の価値、日本人には当たり前の美しさを、海外の方にも理解してもらうための工夫が求められます。

写真はその翻訳を担うことができる、と私は思っています。

ただ綺麗に撮るだけではなく、「なぜ魅力的なのか」まで伝わる写真を作ること。

それが、インバウンドや海外展開を目指す食品・飲食店のビジュアル戦略で、今最も問われていることだと感じています。


まとめ

海外では黒い食べ物が必ずしも売れないわけではありません。

ただし、日本人と同じ感覚で受け取られるとも限りません。

黒という色が持つ意味、文化背景、食習慣。それらが違うからこそ、海外向けの商品撮影や料理撮影では「美味しそう」だけでなく「これは何なのか」「なぜ価値があるのか」まで伝えることが重要になります。


日本の食には、世界に誇れる魅力があります。その魅力を正しく伝えることも、フードカメラマンとしての大切な仕事だと思っています。



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