赤い皿は本当に食欲を増進するのか?フードカメラマンが考える「色と美味しさ」の関係
- 笙子 太田
- 5 日前
- 読了時間: 5分
こんにちは。
インバウンド・海外展開特化のフードカメラマン、太田笙子です。
同じ料理なのに、器が変わるだけで急に美味しそうに見えた。
逆に、なんとなく食欲が湧かなかった。
そんな経験、ありませんか?
これはなぜだと思いますか?
実は、人は料理を口に入れる前から、色によって味を予測しています。
甘そう、辛そう、濃厚そう、さっぱりしていそう・・・
そういう「事前情報」を、視覚から無意識に受け取っています。
フード撮影の仕事をしていると、この「色と美味しさの関係」に本当によく向き合います。今日はそのことを、少し掘り下げて書いてみます。
人は「目で食べている」という話
近畿大学農学部の研究者による食と色彩の関係の研究では、料理は五感で味わうものであり、その中でも視覚はダイレクトかつ瞬時に働くと指摘されています。
コンビニで食品を選ぶ時、パッと見て決めることが多いように、見た目は購買意欲を喚起するマーケティング面でも重要な役割を果たしていて、その視覚を大きく左右するのが「色」だということです。
(出典:近畿大学農学部 食品栄養学科 研究紹介) Japan National Tourism Organization
撮影の現場でもこれは本当によく実感します。
料理そのものは何も変えていないのに、背景や器の色を変えるだけで写真の印象がガラッと変わることがある。
料理写真は「記録」ではなく、「美味しさの予告編」なんです。
なぜファストフード店は赤と黄色が多いのか
街を歩くと、ファストフードチェーンには赤や黄色が多いことに気づきます。
マク○ナルドとか、バーガー○ングとか、ロッ○リアとか、、、
これはブランドカラーだから、という理由だけではありません。
赤は注意を引きやすく、興奮や活力と結びつきやすい色です。
黄色は明るさや親しみやすさを感じさせます。
この2色の組み合わせは「見つけやすい」「入りやすい」「楽しそう」という印象を自然に作り出します。
ファストフードは短時間でお客様の意思決定を促す必要がある。
だからこそ、色彩設計もスピード感や活気を演出する方向に寄っています。
高級和食店はなぜ黒と白なのか
一方で、高級寿司店や懐石料理店を想像してみてください。赤や黄色で統一されたお店はほとんどない。
代わりに黒、白、グレー、木の色といった落ち着いた色が多く使われています。
これは、高級店が求めているものが「食欲の刺激」ではなく「価値の演出」だからです。
真っ白な器は料理の色彩を際立たせ、黒い器は食材の鮮やかさを引き立てながら重厚感を加える。
和食の「余白の美」という考え方と同じで、器や空間が主張しすぎないことで、料理そのものに視線が集まります。
客単価の高いお店ほど「引き算の色設計」をしている・・・ということです。
国によって「美味しそうな色」は違う
ここが、インバウンド向け撮影で特に面白いと感じる部分です。
日本人が上品だと感じる色と、海外の人が魅力的だと感じる色は、必ずしも同じではありません。
日本では白やベージュ、淡いグレーなど落ち着いた色合いが好まれる傾向があります。
一方、中国では赤や金が幸福や繁栄を象徴します。
台湾では明るく元気な色調がSNS映えするとして人気で、アメリカではコントラストの強い鮮やかな色が好まれる傾向があります。
近畿大学農学部の冨田圭子准教授らによる研究(2022年)では、「背景色とおいしさ」の関係が「喫食環境とおいしさの科学」として体系的にまとめられており、皿のリムの色や太さが料理の量感に影響を与えることも発表されています。(出典:近畿大学農学部・農学研究科 研究紹介) Japan National Tourism Organization
つまり、日本人向けには上品に見える写真でも、海外の方が見ると少し地味に映ることがある。
写真は世界共通の言語ではありますが、その言語にも方言があるようなものです。
フード撮影で私が色をどう使うか
撮影に入る前に私がまず考えるのは、「この料理をどんな味に感じてほしいか」です。
抹茶スイーツなら、落ち着いた和の雰囲気を伝えたい場合は黒や深い木目を選びます。
フルーツたっぷりのパンケーキなら、明るく爽やかな色合いの背景にする。
料理そのものは同じでも、背景や器の色によって受け取られる印象は大きく変わります。
インバウンド向けの撮影では、ターゲットの国・地域の色彩感覚を意識した設計を行います。
「どんな色を見せるか」が、最終的な反応率に直結することを、現場で何度も経験しているからです。
「赤い皿は食欲を増進するか」に答えるなら
結論から言うと、「赤い皿だから必ず食欲が増す」というほど単純ではありません。
ただ、色が人の感情や味の予測に影響を与えることは、複数の研究で示されています。
そして私たちは、その色から「甘そう」「濃厚そう」「高級そう」という情報を無意識に読み取っています。
食事とは、舌だけで味わうものではありません。
目でも食べています。
そして色は、その「最初のひと口」をどんな気持ちで迎えるかを、静かに決めているものだと思います。
まとめ
料理の美味しさは、味だけで決まりません。
器の色、空間の色、写真の色など、、、それらすべてが食体験の一部です。
だからこそ、飲食店のメニュー写真や食品パッケージ、SNS投稿では色彩設計が重要になります。
「どんな色を見せるか」が、売上や反応を左右する場面を私自身、撮影の現場で数多く見てきました。
インバウンドのお客様に伝わる写真を作りたい、商品の魅力をもっと色で表現したい、そんな方はお気軽にご相談ください。
フードカメラマン太田笙子



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