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料理写真はなぜ「器」が重要なのか〜フードカメラマンが料理と同じくらい器を見る理由〜

  • 執筆者の写真: 笙子 太田
    笙子 太田
  • 3 時間前
  • 読了時間: 6分

こんにちは。

インバウンド・海外展開特化のフードカメラマン、太田笙子です。

料理が運ばれてきた瞬間、私がまず目を向けるのは料理だけではありません。


最初に確認するのは、です。


「それって、まずは料理でしょ?」と思われるかもしれません。

でも、器を正しく選べていない料理写真は、どれだけ腕をふるった料理でも、画面の中で"なんとなく地味"な印象になってしまうんです。


今日はその理由を、現場のリアルな視点からお伝えします。



「おいしそう」は、視覚が決める

突然ですが、ひとつ質問をさせてください。


料理の「おいしさ」って、どこで感じると思いますか?


実は、食事の満足感を感じる五感の割合として、視覚が83〜87%を占めるとされています。味覚が占めるのはわずか1%程度。


こうした多感覚知覚の研究は近年急速に進んでいて、「見た目がおいしさをつくる」という考え方は、いまや食品科学の世界でも広く認められるようになってきています。


さらに、食事の感覚的満足感において、

料理そのものが占める割合は約5%、

食器・カトラリーは約25%、

残り約70%は食空間の環境(テーブル・照明・温度など)

とされています。


(出典:食ZENラボ「食事のおいしさは五感・六処でつくられる」/多感覚知覚研究をもとにした解説)


この数字を見たとき、私は「やっぱり」と思いました。

料理写真の仕事をしていると、器ひとつで場の空気がまるっきり変わる瞬間を何度も目の当たりにしてきたからです。


器が変わると、料理の印象はここまで変わる

たとえば、同じパスタを想像してみてください。


白い大皿 :清潔感があり、素材の色が引き立つ。イタリアンらしい明るい印象に。

黒いプレート :艶と立体感が際立ち、価格帯が高く見える。モダンで洗練された雰囲気に。

木の器 :ナチュラルで温かい空気感。カジュアルで親しみやすいブランドイメージに。



料理の内容はまったく同じです。

でも、器が変わるだけで価格帯・世界観・ブランドの雰囲気まで変わって見える。

これが、フードカメラマンが器を"料理と同等の被写体"として扱う理由です。



器の色が、料理の色を操る

色の組み合わせについても、私が現場で実感していることがあります。


白い器は料理の色をそのまま見せるので、彩りのある料理との相性が抜群。

一方、チーズや豆腐など淡い色の食材を白皿に乗せると、全体がぼんやりして見えることがあります。


そんなときは黒やグレー、ブルー系の器が意外なほど映える。

濃い色の器は食材の色を際立たせる効果があり、特にブルーは天然の食材にはほぼ存在しない色なので、料理の色とバッティングしにくいんです。


黒い器には食材の色を際立たせる効果があり、料理の艶や立体感も強調されます。


器の艶については、強すぎる光沢は料理を"プラスチックっぽく"見せてしまうこともあるため、マットもしくはセミマットな質感のほうが料理をおいしそうに見せやすい傾向があります。


こうした器の色・素材・質感の選択は、「なんとなくの好み」ではなく、料理写真の仕上がりを左右する技術的な判断です。

撮影の現場では、光の方向と同じくらい器の選択に時間をかけることも珍しくありません。



和食の器は「文化の証人」である

インバウンドや海外展開を意識した撮影になると、器の持つ意味はさらに深くなります。

特に和食の世界では、器は料理の一部とも言われます。


季節感のある陶器、木の質感、和紙の敷き紙。。。

こうした要素は、料理の味を説明するよりもずっと直感的に「日本らしさ」を伝えます。


観光庁「インバウンド消費動向調査(2024年4〜6月期)」によると、

旅行中の支出のうち飲食費は全体の21.8%を占め、一日一人あたり6,000〜9,000円程度にのぼります。


また、訪日外国人の旅行目的として「日本食を食べること」への関心は非常に高く、

食に関する訴求の重要性はいっそう高まっています。

(出典:観光庁「インバウンド消費動向調査 2024年4〜6月期(1次速報)」)


海外からの食通たちが日本食に求めているのは「おいしい料理」だけではありません。

日本の食文化そのものへの体験です。

器が「日本の食文化の語り手」になれるかどうか。。。

それが、インバウンド向けの料理写真で私が特に意識していることのひとつです。


たとえば、繊細な漆器に盛られた一品料理の写真と、

同じ料理を無地の白皿に盛った写真では、外国人の目に映る"物語の深さ"がまったく違う。


伝わるのは料理の情報だけでなく、その国の美意識や哲学にまで届くかどうか、というところです。



料理写真は「料理」だけで完結しない

料理写真という仕事を一言で表すなら、「料理を取り巻くすべての要素を設計すること」だと私は思っています。


料理本体・器・光・背景・小道具・・・

これらが重なり合ってはじめて、「おいしそう」「食べてみたい」「このお店に行きたい」という気持ちが生まれます。


インスタグラムで飲食店を探す人の割合は全体の66%というデータもあり、

写真のクオリティがそのままお店の集客に直結する時代です。

(出典:PR TIMES「飲食店におけるSNSについての意識調査 SNSから飲食店を知った83%、実際に来店した84%」)


そして器は、その写真の印象を左右する「縁の下の主役」とも言える存在なんです。


撮影の現場でよく起きるのが、

「料理はすごくおいしそうなのに、器が惜しい…」という状況。


料理の仕上がりに全精力を注いだシェフの気持ちを思うと、

フォトグラファーとして器の選定にも責任を持たなければと、改めて感じます。


プロのフードカメラマンの仕事は、シャッターを押すことだけではありません。

料理と器と光と空間を組み合わせて「食べたい」と思わせるビジュアルを設計すること。


それがフードカメラマンの本質的な役割です。


まとめ

料理写真における器の役割を整理すると、次の3点に集約されます。

① 料理の印象・価格帯・ブランドイメージを決める

同じ料理でも、器が変わると見る人の「値段感」や「世界観」への認識がまるっきり変わります。

② 料理の色を引き立てる(あるいは消してしまう)

器の色・素材・質感は、料理の色の見え方に直接影響します。

「何を盛るか」だけでなく「何に盛るか」を意識することが大切です。

③ 文化や物語を伝える

特にインバウンドや海外展開を意識した撮影では、器が「日本の食文化そのもの」を語る媒体になります。

料理写真は、料理だけで完結しません。

器を「ただの容器」として扱うか、「料理の一部」として設計するか。

この違いが、最終的な写真のクオリティを大きく左右するのだと、私は現場で実感し続けています。



料理撮影・食品撮影・商品撮影のご相談は、下記よりお気軽にどうぞ。


株式会社Light&Green 代表取締役/フードカメラマン 太田笙子


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