料理カメラマンは「食いしん坊」のほうが強い
- 笙子 太田
- 10 時間前
- 読了時間: 3分
こんにちは。 料理撮影・食品撮影を専門にしているフードカメラマン、太田笙子です。
今日は少し、私が仕事をするなかでずっと感じていることを書いてみます。
それは・・・料理カメラマンは"食いしん坊"のほうが強い ということ。
笑い話に聞こえるかもしれませんが、これは本気です。
むしろ、撮影の仕事を続けるほどに、そう確信しています。
料理の魅力に気づく力は、食べた記憶から来る
食べることが好きな人は、料理を見たとき、自然に「美味しそう」「食べたい」「あ、いい香りがしそう」と感じます。
この感覚、実はフード撮影においてとても重要なのです。
というのも、料理写真を見る人も、まったく同じように感じているから。
写真を撮る側と、写真を見る側が同じ感覚を持っているということは、撮影者がその感覚を持っていなければ、見ている人の気持ちには届きにくい。。
私はそう考えています。
研究の観点からも、食べ物の視覚情報が食欲に強く影響することは確認されています。
2023年のオックスフォード大学のCalifano & Spence(Food Quality and Preference, 2024)の研究では、メニューに料理写真を掲載することで注文される可能性が高まることが示されました。
料理写真の目的は「綺麗に撮ること」ではなく、「食べたくなること」。
このゴールを体感として知っているかどうかが、仕上がりに差を生みます。
"美味しそうな瞬間"を知っているのは、食べてきた人
食べることが好きな人は、料理の「一番美味しそうな瞬間」を感覚として知っています。
たとえば・・・
・スプーンを入れた瞬間のとろみ
・湯気がふわっと上がる一瞬
・ソースがゆっくり流れ落ちる様子
こういったシズル感のある瞬間は、料理をよく食べている人ほど「あ、これが美味しいやつだ」とピンと来る。
この直感は、撮影の現場で確実に生きてきます。
ちなみに、食品の温度感が食欲に影響することは複数の研究で示されており、料理が温かそうに見えると美味しさの評価が上がることが確認されています
(Kokaji & Nakatani, 2021; Sakay et al., 2022)。
湯気のある写真が「美味しそう」と感じられるのは、感覚的な話ではなく、きちんと根拠があることなんです。
料理写真は五感で作る
料理写真は、視覚だけで完結するものではありません。
・香り
・温度
・食感
・音
写真というフォーマットは視覚しか伝えられないけれど、だからこそ、それ以外の感覚をどう想像させるかが腕の見せどころです。
この想像力は、実際に料理を食べてきた経験から育まれることが多い・・・
私自身、そう感じています。
なんとなく「美味しそう」で終わらせるのか、
「あの料理の、あの瞬間の匂いまで思い出せる」写真にできるか。
その差は、食の経験の積み重ねから来ている部分が大きいと思うのです。
だから私は、食いしん坊であることを恥ずかしいと思っていない
もちろん、食に強い関心がなくても料理撮影はできます。
技術は技術ですから。
でも、食べることが好きな人ほど——料理の背景にある文化や、素材の組み合わせの妙、提供する人の意図——そういったものまで自然と興味が向きます。
その好奇心が、写真の「深さ」として現れてくると私は思っています。
フード撮影とは、料理を撮る仕事であると同時に、食の魅力を伝える仕事。
だから私は、食いしん坊であることを、一つの専門性だと思っています。
株式会社Light&Green代表取締役/フードカメラマン 太田笙子



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