食器撮影で本当に大切なのは「料理」ではなく「視線の行き先」
- 笙子 太田
- 1月17日
- 読了時間: 4分
食器撮影というと、つい
「美味しそうに撮らなきゃ」
「料理をしっかり盛らなきゃ」
と思われがちです。
でも、食器そのものを主役にした撮影では、ここが大きな落とし穴になります。
食器撮影の勝負どころは、“料理を美味しく撮ること”ではありません。
そのお皿があることで、どんな食卓が想像できるか。
どんな時間が流れそうか。
その「美味しい雰囲気」を、いかに視覚で伝えられるかがすべてです。
私はフードカメラマンとして、料理撮影・食品撮影・商品撮影を数多く行ってきましたが、食器撮影だけは、料理撮影とは思考を切り替える必要があると強く感じています。
なぜ「盛りすぎる」とお皿が死ぬのか
料理撮影では、・シズル感・ボリューム・具材の主張
が重要になります。
一方、食器撮影で同じことをやってしまうとどうなるか。
✔ 料理に目がいってしまう
✔ お皿の形や縁の美しさが見えない
✔ 素材感や厚みが伝わらない
結果、「どんなお皿なのか」が分からない写真になります。
極端に言えば、
料理が主役になった瞬間、その写真はもう“食器写真”ではありません。
食器撮影は「余白をどう使うか」の世界
食器撮影でまず考えるのは、何を写すかより、何を写さないか。
・料理はあえて少量
・中央に置かない
・高さを出しすぎない
こうすることで、自然と視線は縁のラインリムの立ち上がり釉薬のムラ影の落ち方へと誘導されます。
「余白=何もない場所」ではありません。
余白は、視線を誘導するための装置です。
「美味しい料理」ではなく「美味しい気配」をつくる
食器撮影で私がよく使う言葉があります。
美味しさは、直接見せなくていい。
例えば、
・少しだけ残ったソース
・フォークが一度触れた跡
・使い終わったあとの静けさ
こうした要素があると、人は無意識に「ここで食事があった」「誰かが使った器だ」と物語を補完します。
これは、料理を見て美味しそうと思うのではなく、体験を想像して美味しさを感じる状態です。
食器が本来持つ価値は、「盛るもの」ではなく「時間を包む器」であること。
だからこそ、食器撮影では完成形の料理より、余韻のある演出が強く効きます。
光は「料理」ではなく「器の輪郭」に当てる
もう一つ大切なのが光の考え方。
料理撮影では、照り・ツヤ・シズルを強調する光を使います。
でも食器撮影では逆です。
✔ 光は硬すぎない
✔ 面ではなくエッジをなぞる
✔ 影を消しすぎない
器の立体感や厚み、質感は光と影の境界線で決まります。
料理に光を当てる感覚のまま撮ると、お皿はただの背景になってしまいます。
海外向け・インバウンド視点ではさらに重要
海外向けの商品撮影、特にインバウンドや海外ECでは、「使われているイメージ」が非常に重視されます。
実際、2023年以降の海外EC・D2Cのビジュアルトレンドでも、
完璧に盛られた料理
より
・リアルな使用感
・余白のあるライフスタイルカットの方が、購買意欲につながりやすいとされています
(出典:Shopify Plus Blog 2023 / Etsy Seller Handbook 2024)。
つまり、食器撮影は“物撮り”ではなく、“体験撮影”。
この視点を持てるかどうかで、写真の説得力は大きく変わります。
まとめ:食器撮影は「主役を我慢できるか」
食器撮影が難しい理由はシンプルです。
撮りたいものを、あえて引っ込める必要があるから。
料理を美味しく見せたい気持ちを抑え、盛り込みたい欲を抑え、説明したくなる気持ちを抑える。
その代わりに、見る人の想像力に委ねる。
それができたとき、お皿は「ただの道具」から選ばれるプロダクトへ変わります。
食器撮影で迷ったら、ぜひ一度立ち止まってみてください。
この写真、ちゃんと“お皿”を見てもらえていますか?
もし答えに少しでも迷いがあるなら、そこが改善ポイントです。
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フードカメラマン 太田笙子(料理撮影/食品撮影/商品撮影/海外向けビジュアル戦略)






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