和食器と洋食器で“正解の撮り方”はまったく違う― 世界観を壊さないための視点切り替え ―
- 笙子 太田
- 1月25日
- 読了時間: 4分
食器の商品撮影やEC用写真で、実はとても多い失敗があります。
それは、和食器も洋食器も、同じ撮り方をしてしまうこと。
白背景で、同じ光で、同じ盛り量で撮る。
一見、整っていて「間違いなさそう」ですが、
このやり方は器の世界観を静かに壊してしまうことがあります。
私はフードカメラマンとして、料理撮影・食品撮影・商品撮影を数多く行ってきましたが、特にインバウンド向け・海外展開向けの撮影では、
「和食器なのに、洋食器っぽく見える」「日本らしさが伝わらない」
という相談を受けることが少なくありません。
その原因は、器の文化背景を無視した撮り方にあります。
和食器:静・余白・線
和食器の魅力は、
・完璧でない形
・揺らぎ
・余白
・線の美しさ
にあります。
日本の器は、「たくさん盛る」ための器ではなく、
間(ま)を楽しむための器。
撮影でも同じ考え方が必要です。
・盛りは最小限
・器の中央に置かない
・余白を怖がらない
特に大切なのが、器の輪郭と“線”をきちんと見せること。
縁の立ち上がり、釉薬の溜まり、歪みのニュアンス。
これらは、情報として説明するよりも、静かな写真の中で感じてもらうものです。
洋食器:量感・曲線・リズム
一方、洋食器はまったく逆の思想で作られています。
・量を受け止める
・料理と一体になる
・曲線の美しさ
・食卓全体のリズム
洋食器は、「使われてこそ完成する器」です。
撮影でも、
・ある程度の量感
・器いっぱいに広がる構図
・動きのある配置
が入ることで、器のスケール感や存在感が伝わります。
和食器と同じ感覚で「引き算しすぎる」と、洋食器は一気に弱く見えてしまいます。
同じ白背景でも、光の置き方はまったく違う
「白背景なら、同じ光でいいですよね?」
これも、よく聞かれる質問です。
答えは、NO。
和食器の光
・やわらかい
・広がる
・影を残す
影は消すものではなく、器の存在を感じさせるための要素です。
光が強すぎると、和食器特有の“静けさ”が消えてしまいます。
洋食器の光
・ややコントラスト強め
・曲線にハイライトを入れる
・立体感を出す
光で“量”と“厚み”を伝えることで、器が頼もしく見えます。
同じ白背景でも、光の設計が違えば、写真の印象はまったく別物になります。
海外向けに誤解されやすい「和食器」の撮り方
インバウンド・海外向け撮影で特に注意したいのが、和食器の誤解です。
海外の方にとって、和食器は「未知の器」。
・サイズ感が分からない
・用途が想像できない
・飾り用に見えてしまう
この状態で、完全に空のまま、静かすぎる写真を出すと、
「使いづらそう」「実用性が低そう」という誤解を招くことがあります。
だからこそ海外向けでは、
・最小限でも“使われている気配”
・量感が分かる要素
・人の存在を感じる痕跡
を入れることが重要です。
和食器の美意識を守りながら、海外の視点で“親切にする”。
このバランスが、インバウンド向け食器撮影では欠かせません。
撮り方を変える=文化を翻訳すること
和食器と洋食器の撮り分けは、技術の問題ではありません。
視点の切り替えです。
・これはどんな文化から生まれた器か
・誰が、どんな場面で使うのか
・海外の人は、何を不安に思うか
そこまで考えて、構図・盛り・光を設計する。
だから食器撮影は、単なる商品撮影ではなく、文化の翻訳作業だと私は考えています。
まとめ:同じ撮り方をしない勇気
「今までこの撮り方で問題なかったから」「全部揃って見えるから」
そう思って続けている撮り方が、実は器の魅力を削っていることもあります。
和食器には、和食器の正解。洋食器には、洋食器の正解。
同じ白背景でも、同じ光でも、同じ盛り量でもいいわけじゃない。
もし海外展開やインバウンド集客を考えているなら、なおさらこの違いは無視できません。
写真を変えることは、器の価値の伝わり方を変えること。
世界観を壊さないために、まずは「撮り方を分ける」ことから始めてみてください。
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フードカメラマン 太田笙子(食器撮影/商品撮影/料理撮影/インバウンド・海外展開向けビジュアル設計)






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