"サクサク感"はどう撮る?|フードカメラマンが使う光の設計
こんにちは。
インバウンド・海外展開特化のフードカメラマン、太田笙子です。
料理写真を見た瞬間に、「これ、絶対サクサクしてる」と感じたことはありませんか?
クロワッサンの断面、揚げたての天ぷら、ミルフィーユの繊細な層。
写真なのに、なぜかパリッという音が聞こえそうな気がする。
あの感覚、実は気のせいではありません。
フードカメラマンとして現場に立ち続けてきて、はっきり言えることがあります。
あの「サクサク感」は、料理そのものが発しているのではなく、光で作っています。
「美味しそう」の正体は、目に見えない情報だった
料理写真の仕事は、よく「美味しそうに撮る仕事」と言われます。
でも私は少し違う言い方をしています。
温度、香り、音、食感etc
こうした「目に見えない情報」を、視覚に翻訳する仕事だと思っています。
その中でも特に難しいのが、食感を表現することです。
なぜ難しいかというと、サクサク感は「動き」と「音」で感じるものだから。
写真は静止しているのに、食感だけは動的な情報なんです。
だからこそ、光の設計がすべてを決めます。
サクサク感は「表面」ではなく「影」で決まる
最初に押さえておきたいのがこの原則です。
サクサク感を脳が認識するのは、食品の表面に凹凸を見たときなど。。。
パン粉の立体感、クロワッサンの層、揚げ衣の細かい質感etc
こうした凹凸が見えるから、「硬そう」「軽そう」「サクサクしてそう」という判断が生まれます。
つまり、撮影で大事なのは「凹凸を見せること」。
そして凹凸を見せるには、光で影を作る必要があります。
真上からの光は、サクサク感を消す
スマートフォンで料理を撮るとき、天井の照明だけで撮っていませんか。
実はこれ、サクサク感を消してしまう典型例です。
真上から均一に光が当たると、影が消えます。
影が消えると立体感がなくなる。
立体感がなくなると、表面がのっぺりと平坦に見える。
結果として写真全体が「しんなりした」印象になってしまいます。
唐揚げも天ぷらも、光を間違えるとたちまち「冷めた揚げ物」に見える。
これは本当によくある失敗で、現場でも何度も目にしてきました。
サクサク感を生み出すのは「斜め後ろからの光」
では、どう撮ればいいのか。
私がよく使うのは、斜め後ろから当てる光・・・いわゆる半逆光に近いポジションです。
この光が衣の凹凸、粉感、焼き目、層のエッジに細かい影を作り出す。
するとそれを見た脳が「硬そう→軽そう→サクサクしてそう」という順番で認識していきます。
この考え方は料理写真に限りません。
商品撮影でも同じロジックで、質感を「見せる」ことが購買意欲に直結します。
実際、アイランド株式会社が「おとりよせネット」ユーザーを対象に行った調査(2025年公開、有効回答294名)では、SNSの投稿を見て食品通販での購入に至った理由として「商品の画像が美味しそうだったから」が70%と最多でした
(出典:アイランド株式会社「お取り寄せに関するアンケート調査(2025年)」)。
写真が美味しそうに見えるかどうか、それが購買の入口になっているということです。
クロワッサンは「面」ではなく「線」を撮る
クロワッサン撮影でよくある失敗が、「丸いパンとして撮ってしまう」ことです。
でもクロワッサンの魅力はバターの層、割れた断面、薄い皮の重なり方にあります。
だから私は「面」ではなく「線」を意識して撮ります。
具体的には、エッジに光を当てて細いハイライトを入れ、奥の層まで見えるようにする。
そうすることで、パリッとした軽さが写真の中に生まれます。
ミルフィーユは「崩れる直前」が一番おいしい
ミルフィーユはフード撮影の中でも、特に難しい被写体のひとつです。
綺麗に整えすぎると、逆に美味しく見えない。
なぜかというと、サクサク感は「壊れやすさ」と表裏一体だからです。
完璧すぎる見た目は、食感の情報を消してしまう。
だから撮影では意図的に少し崩す、粉を落とす、断面を見せる、という演出を入れます。
「料理を壊す仕事」とよく言うのですが、その崩れがあるからこそ、見た人が食感を想像できる。
海外向けでは「わかりやすさ」を優先する
インバウンド向け・海外向けの撮影では、もう一つ重要な視点があります。
日本の料理写真は余白や静けさ、空気感で美味しさを伝えることが多い。
でも海外では「一瞬で伝わるわかりやすさ」と「情報量」が重視されます。
つまり「これはサクサクです」を、写真だけで説明できないといけない。
そのため海外向けでは、断面を大きく見せる、粉感を強調する、コントラストを少し強める、という設計をすることが多いです。
「音が聞こえる写真」は強い
私がフード撮影でずっと大切にしているのが、「音が聞こえるかどうか」という感覚です。
ジュワッ、カリッ、パリッ、サクッ・・・
こうした音を視覚で想像させられる写真には、力があります。
なぜなら、人は「味」より先に「期待」を買っているから。
ECでもSNSでも広告でも、最初に届くのは写真です。
だからこそ「ただ綺麗に撮る」ではなく「食感を設計する」という視点が、これからの料理写真にはますます重要になると思っています。
まとめ
サクサク感を写真で伝えるために必要なのは、
①凹凸を見せること
②影を作ること
③断面を見せること
④壊れそうな空気感を残すこと
この4つです。
そしてその中心にあるのが、光の設計です。
料理写真は単なる記録ではありません。
食べた瞬間の体験を、1枚の写真に翻訳する仕事です。
もし料理写真が平坦に見える、揚げ物が美味しく見えない、SNSで反応が伸びない、そんな状況があるなら、まず「光」を見直してみてください。
それだけで写真は大きく変わります。
株式会社Light&Green代表取締役/フードカメラマン 太田笙子
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