"サクサク感"はどう撮る?|フードカメラマンが使う光の設計
- 笙子 太田
- 4 日前
- 読了時間: 5分
こんにちは。
インバウンド・海外展開特化のフードカメラマン、太田笙子です。
料理写真を見た瞬間に、「これ、絶対サクサクしてる」と感じたことはありませんか?
クロワッサンの断面、揚げたての天ぷら、ミルフィーユの繊細な層。
写真なのに、なぜかパリッという音が聞こえそうな気がする。
あの感覚、実は気のせいではありません。
フードカメラマンとして現場に立ち続けてきて、はっきり言えることがあります。
あの「サクサク感」は、料理そのものが発しているのではなく、光で作っています。
「美味しそう」の正体は、目に見えない情報だった
料理写真の仕事は、よく「美味しそうに撮る仕事」と言われます。
でも私は少し違う言い方をしています。
温度、香り、音、食感etc
こうした「目に見えない情報」を、視覚に翻訳する仕事だと思っています。
その中でも特に難しいのが、食感を表現することです。
なぜ難しいかというと、サクサク感は「動き」と「音」で感じるものだから。
写真は静止しているのに、食感だけは動的な情報なんです。
だからこそ、光の設計がすべてを決めます。
サクサク感は「表面」ではなく「影」で決まる
最初に押さえておきたいのがこの原則です。
サクサク感を脳が認識するのは、食品の表面に凹凸を見たときなど。。。
パン粉の立体感、クロワッサンの層、揚げ衣の細かい質感etc
こうした凹凸が見えるから、「硬そう」「軽そう」「サクサクしてそう」という判断が生まれます。
つまり、撮影で大事なのは「凹凸を見せること」。
そして凹凸を見せるには、光で影を作る必要があります。
真上からの光は、サクサク感を消す
スマートフォンで料理を撮るとき、天井の照明だけで撮っていませんか。
実はこれ、サクサク感を消してしまう典型例です。
真上から均一に光が当たると、影が消えます。
影が消えると立体感がなくなる。
立体感がなくなると、表面がのっぺりと平坦に見える。
結果として写真全体が「しんなりした」印象になってしまいます。
唐揚げも天ぷらも、光を間違えるとたちまち「冷めた揚げ物」に見える。
これは本当によくある失敗で、現場でも何度も目にしてきました。
サクサク感を生み出すのは「斜め後ろからの光」
では、どう撮ればいいのか。
私がよく使うのは、斜め後ろから当てる光・・・いわゆる半逆光に近いポジションです。
この光が衣の凹凸、粉感、焼き目、層のエッジに細かい影を作り出す。
するとそれを見た脳が「硬そう→軽そう→サクサクしてそう」という順番で認識していきます。
この考え方は料理写真に限りません。
商品撮影でも同じロジックで、質感を「見せる」ことが購買意欲に直結します。
実際、アイランド株式会社が「おとりよせネット」ユーザーを対象に行った調査(2025年公開、有効回答294名)では、SNSの投稿を見て食品通販での購入に至った理由として「商品の画像が美味しそうだったから」が70%と最多でした
(出典:アイランド株式会社「お取り寄せに関するアンケート調査(2025年)」)。
写真が美味しそうに見えるかどうか、それが購買の入口になっているということです。
クロワッサンは「面」ではなく「線」を撮る
クロワッサン撮影でよくある失敗が、「丸いパンとして撮ってしまう」ことです。
でもクロワッサンの魅力はバターの層、割れた断面、薄い皮の重なり方にあります。
だから私は「面」ではなく「線」を意識して撮ります。
具体的には、エッジに光を当てて細いハイライトを入れ、奥の層まで見えるようにする。
そうすることで、パリッとした軽さが写真の中に生まれます。
ミルフィーユは「崩れる直前」が一番おいしい
ミルフィーユはフード撮影の中でも、特に難しい被写体のひとつです。
綺麗に整えすぎると、逆に美味しく見えない。
なぜかというと、サクサク感は「壊れやすさ」と表裏一体だからです。
完璧すぎる見た目は、食感の情報を消してしまう。
だから撮影では意図的に少し崩す、粉を落とす、断面を見せる、という演出を入れます。
「料理を壊す仕事」とよく言うのですが、その崩れがあるからこそ、見た人が食感を想像できる。
海外向けでは「わかりやすさ」を優先する
インバウンド向け・海外向けの撮影では、もう一つ重要な視点があります。
日本の料理写真は余白や静けさ、空気感で美味しさを伝えることが多い。
でも海外では「一瞬で伝わるわかりやすさ」と「情報量」が重視されます。
つまり「これはサクサクです」を、写真だけで説明できないといけない。
そのため海外向けでは、断面を大きく見せる、粉感を強調する、コントラストを少し強める、という設計をすることが多いです。
「音が聞こえる写真」は強い
私がフード撮影でずっと大切にしているのが、「音が聞こえるかどうか」という感覚です。
ジュワッ、カリッ、パリッ、サクッ・・・
こうした音を視覚で想像させられる写真には、力があります。
なぜなら、人は「味」より先に「期待」を買っているから。
ECでもSNSでも広告でも、最初に届くのは写真です。
だからこそ「ただ綺麗に撮る」ではなく「食感を設計する」という視点が、これからの料理写真にはますます重要になると思っています。
まとめ
サクサク感を写真で伝えるために必要なのは、
①凹凸を見せること
②影を作ること
③断面を見せること
④壊れそうな空気感を残すこと
この4つです。
そしてその中心にあるのが、光の設計です。
料理写真は単なる記録ではありません。
食べた瞬間の体験を、1枚の写真に翻訳する仕事です。
もし料理写真が平坦に見える、揚げ物が美味しく見えない、SNSで反応が伸びない、そんな状況があるなら、まず「光」を見直してみてください。
それだけで写真は大きく変わります。
株式会社Light&Green代表取締役/フードカメラマン 太田笙子
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