「食パン」は英語でbreadじゃなかった。海外向け撮影で気づいた、日本の当たり前
こんにちは。
インバウンド・海外展開に特化したフードカメラマン、太田笙子です。
私は普段、撮影のイメージを探すときにPinterestをよく使います。
しかも、日本語ではなく英語で検索することが多いです。
海外ではどんなスタイリングで撮っているんだろう、どんな色を合わせているんだろう、と見ていると、日本語で検索したときとはかなり違う写真が出てくるので面白いんです。
少し前、食パンの撮影イメージを探していたときのこと。
「食パンだからbreadだろう」
と思って、
「bread photography」
で検索していました。
でも、探しても探しても、私がイメージしている「あの食パン」がなかなか出てこない。
バゲットだったり、カンパーニュだったり、ハード系のパンだったり……。
「いや、そうじゃなくて。四角くて、白くて、ふわふわの、いつもの食パンが見たいんだけどな」
と思いながら探していました。
日本の食パンなら寝られる?アメリカのパンならフリスビー?
それからしばらく経ったある日、何気なくYouTube Shortsを見ていたら、食パンについて話している動画が流れてきました。
そこで初めて知ったのが、
「Japanese milk bread」
という言葉でした。
しかも動画の中では、日本とアメリカの食パンの違いを、かなり面白い例えで話していました。
日本の食パンは、敷き詰めたらその上で寝られそうなくらい柔らかい。
一方、アメリカの食パンは、ビーチでフリスビーみたいに投げられそうなくらいしっかりしている(笑)。
もちろん、かなり大げさな例えです。
でもこれを聞いたときに、
「あ、海外の人からすると、日本の食パンの柔らかさってそんなに特徴的なんだ」
と初めて気づきました。
私たちにとって、ふわふわの食パンって普通ですよね。
むしろ「食パンってそういうものでしょ」と思っていました。
でも、その「普通」が海外から見ると、日本の食パンを特徴づけるものとして見られている。
そして私がPinterestで「bread photography」と検索しても、探していた食パンがなかなか出てこなかった理由も、ここでようやくつながりました。
【動画出典】
YouTube Shorts
海外では「Japanese milk bread」「shokupan」
気になって調べてみると、日本の食パンは海外で「Japanese milk bread」や「shokupan」として紹介されていました。
2025年にTokyo Weekenderが公開した記事でも、shokupanは「Japanese milk bread」と呼ばれ、ふわふわした食感、ミルキーな香り、繊細な甘さを持つパンとして紹介されています。
Martha Stewartの2025年更新のレシピでも、「Shokupan (Japanese Milk Bread)」という名称が使われています。
私たちにとっては、スーパーに普通に並んでいる食パン。
でも海外のサイトを見てみると、そこにわざわざ「Japanese」と付いているんですよね。
これ、ちょっと面白くないですか。
【出典】
Tokyo Weekender「Japanese Milk Bread: Where To Find the Best Shokupan in Tokyo」(2025年7月17日)
Martha Stewart「Shokupan (Japanese Milk Bread)」(2025年3月6日更新)
日本人にとって、食パンは「日本食」じゃない
朝起きて食パンを焼く。
バターを塗ったり、ジャムを塗ったり。
コンビニでサンドイッチを買えば、そのパンも食パンです。
私たちにとってあまりにも普通なので、食パンを見て「日本の食文化だなあ」と感じる人は、たぶんあまりいないと思います。
私も考えたことがありませんでした。
ところが海外の記事を見ていると、日本の食パンは「soft」「fluffy」「milky」「slightly sweet」といった言葉で説明されています。
2026年にJust One Cookbookが公開した食パンの記事でも、日本のshokupanは「milky-sweet」で「cloud-like」な食感を持ち、日本の朝食の定番として紹介されています。
海外から見ると、あの柔らかさも、しっとり感も、ほんのりした甘さも、日本の食パンを特徴づける要素なんですね。
【出典】
Just One Cookbook「Shokupan (Japanese Milk Bread) 食パン」(2026年5月17日公開)
懐紙や風呂敷だけが「日本らしさ」じゃなかった
海外向けのフード撮影をしていると、「日本らしさって何だろう」と考えることがよくあります。
器や懐紙、風呂敷、和菓子のようなものは、わかりやすいですよね。
海外の人にとって日本文化として見えることを、日本人側もなんとなく理解しています。
でも、食パンは盲点でした。
日本人にとって普通すぎて、「海外から見たら特徴的な日本の食文化かもしれない」という視点で見ていなかったんです。
私はインバウンド向けのフード撮影についてお話しするときにも、「同じものでも、日本人向けと海外向けでは伝え方が変わる」という話をしています。
海外向けの写真では、単純に日本で使っているビジュアルをそのまま持っていくのではなく、相手側からどう見えているかを考える必要があります。
今回の食パンの話も、かなり近いと思いました。
「bread」と英訳するだけでは、探している人と出会えないかもしれない
海外に何かを伝えようとすると、つい「日本語を英語に変えればいい」と考えてしまいます。
食パン → bread。
英語として大きく間違っているわけではありません。
でも、それで終わってしまうと、海外の人が見ている世界には辿り着けないことがある。
実際、私は「bread photography」と検索して、欲しい写真に辿り着けませんでした。
「Japanese milk bread photography」や「shokupan photography」と検索していたら、検索結果はかなり違っていたはずです。
これって、越境ECでも同じことが起こるんじゃないかなと思います。
日本では誰もが知っている商品だから、日本で一般的に使われている名前をそのまま英訳して商品ページを作る。
でも、海外のお客様は本当にその言葉で検索しているのでしょうか。
そもそも、その商品を何だと思っているのでしょうか。
食パンですらこうなのだから、日本独自の食品や調理道具、器などでは、もっとありそうです。
海外向けの写真は「英訳」ではなく「文化翻訳」なのかもしれない
今回、私が一番面白いと思ったのはここでした。
「食パンって英語で何と言うんだろう?」
だけでは、たぶん足りなかったんです。
「海外の人には、この食パンが何に見えているんだろう?」
こっちを考えないといけなかった。
海外向けのフード撮影をしていると、同じことを何度も感じます。
日本では当たり前すぎて説明しないものが、海外では商品の魅力になったりする。反対に、日本では「これくらい伝わるでしょう」と思って省略していることが、海外では伝わらないこともあります。
写真は「世界共通言語」と言われることがあります。
私自身、インバウンド向け写真についてお話しするときにもそう説明しています。
ただ、実際に海外向けの仕事をしていると、その「世界共通言語」にも翻訳は必要なんだなと思います。
何を写すのか。どこを強調するのか。
その前に、
「相手には、これはどう見えているんだろう?」
を考えてみる。
bread photographyで食パンを探して迷子になったことで(笑)、そんな基本的なことに改めて気づきました。
海外向けの商品写真や、越境EC・インバウンド向けのフード撮影についてご相談がありましたら、お問い合わせください。
お問い合わせ
太田笙子
株式会社Light&Green 代表取締役/フードカメラマン
インバウンド・海外展開に特化したフード撮影を行っています。



コメント