美味しい料理と、美味しそうな料理は違う
- 笙子 太田
- 5 日前
- 読了時間: 3分
こんにちは。インバウンド・海外展開特化のフードカメラマン、太田笙子です。
先日の撮影で、ラーメンに使う「テボ(麺を茹でたり湯切りをしたりする道具)」の撮影がありました。
湯切りをするシーンも撮影する予定だったのですが、その動作を弟子でもあるフードカメラマンにお願いしました。
すると、さすが撮影者。
湯切りをする角度。
お湯が飛ぶ方向。
飛沫が光を受けて綺麗に見える立ち位置。
すべてが絶妙だったのです。
その様子を見ながら、改めて思いました。
「美味しい料理」と「美味しそうな料理」は、実は少し違うのだと。
美味しいだけでは伝わらない
もちろん料理そのものが美味しいことは大前提です。
でも、写真や動画では味を伝えることができません。
伝えられるのは視覚だけです。
例えばラーメン屋さんで見かける豪快な湯切り。
実際には湯切りの一瞬ですが、写真ではその飛び散る飛沫が躍動感を生みます。
湯気が立ち上がる様子は熱々感を伝えます。
麺が持ち上がる角度ひとつでコシがありそうに見えたり、柔らかそうに見えたりします。
味は変わっていません。
変わるのは見え方です。
美味しそうに見えない料理写真。その理由。
飲食店のオーナーさんから、
「実物はもっと美味しいんですけどね」
と言われることがあります。
実際に食べると本当に美味しい。
でも写真ではその魅力が伝わっていない。
これは珍しいことではありません。
料理人は「美味しく作るプロ」です。
一方で、フードカメラマンは「美味しそうに見せるプロ」です。
似ているようで役割が違います。
料理人は温度や味付けを考えます。
私たちは光の方向や器の向き、料理の配置、湯気や飛沫の見せ方を考えています。
だから撮影現場では、
「もう少しネギをこちらに」
「麺を少し持ち上げましょう」
「その湯切りをもう一度お願いします」
という会話が当たり前に行われます。
料理を作り直しているのではなく、魅力を伝えるための調整をしているのです。
実は今回のラーメンも少し工夫していた
今回の撮影では完成したラーメンの写真も撮影しました。
以前、別の撮影で二杯のラーメンを作るのに時間がかかってしまい、撮影中に麺が伸びてしまったことがあります。
そのときクライアントから言われたのが、
「ちょっとうどんみたいですね」
という一言でした。
味の問題ではありません。
見た目の問題です。
そこで今回は麺を一度水で締め、スープも冷たい出汁醤油ベースに変更しました。
さらにごま油を使うことで、冷たくても油が固まりにくい状態にしています。
本来の食べ方とは少し違うかもしれません。
でも写真の中では、麺の美しさを保つことができます。
これも「美味しそう」を作るための工夫です。
フードカメラマンが売っているもの
フードカメラマンの仕事は、料理を撮ることではありません。
料理の魅力をその写真を見た人へ伝える(翻訳する)ことです。
お客様が感じた「美味しい」を、写真を見た人の「食べてみたい」に変換する。
そのために光を作り、角度を探し、時には飛沫の飛び方まで計算します。
今日の撮影で弟子が見せてくれた見事な湯切りを見ながら、改めて感じました。
美味しい料理を作る技術と、美味しそうに見せる技術は別物なのだと。
そして私たちフードカメラマンは、その「美味しそう」を作る専門家なのだと思います。
私たちが撮っているのは料理ではありません。
料理を見た人の『食べたい』という感情なのかもしれません。
#食に物語を
太田笙子フードカメラマン/株式会社Light & Green 代表取締役



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