なぜ和菓子には「季節」があるのか〜フードカメラマンが知った、日本人が「四季を食べる」理由〜
- 笙子 太田
- 13 分前
- 読了時間: 4分
こんにちは。インバウンド・海外展開特化のフードカメラマン、太田笙子です。
昔、和菓子の撮影をしていたときのことです。
「この和菓子は、まだ少し季節が早いんですよ。」
そう教えていただきました。
まだ桜も咲いていないのに(というか撮影しているときは1月でした)桜の和菓子を撮っているのです。
でも、この一言をきっかけに、日本人の季節の楽しみ方について改めて考えるようになりました。
実は、和菓子には日本人ならではの美意識が詰まっているのです。
■ 日本人は「今」ではなく「少し先の季節」を楽しむ
和菓子の世界では、「季節を先取りする」ことが美しいとされています。
春になる少し前には桜を。
梅雨が来る前には紫陽花を。
秋が深まる前には紅葉を。
冬になる前には雪景色を。
実際の自然よりも一歩早く季節を表現することで、「もうすぐこの季節がやってくる」という期待感を楽しんでいます。
これは日本の伝統文化によく見られる考え方です。
茶道や華道、俳句でも、その季節が真っ盛りになる頃ではなく、「訪れ始め」や「移ろい」を大切にします。
だから和菓子も、「今」を写したものではなく、「これから来る季節」を表現していることが多いのです。
■ 和菓子は食べ物ではなく、小さな季節そのもの
和菓子をよく見ると、単に花の形をしているだけではありません。
桜が風に舞う様子や朝露に濡れた若葉。
川のせせらぎや雪が静かに積もる景色、月夜に浮かぶすすき。
そんな自然の一瞬を、小さなお菓子の中に閉じ込めています。
私は撮影のたびに職人さんへ、「これは何を表現している和菓子ですか?」と伺うようにしています。
すると、「春の霞です」「初夏の川辺です」「秋の夕暮れです」と、一つひとつに物語があることを教えてくださいます。
その話を聞くたびに、「和菓子は食べる芸術なんだな」と感じます。
■ 背景を知ると、写真の撮り方まで変わる
私はフードカメラマンとして、「美味しそう」に撮ることはもちろん大切にしています。
でも、和菓子の場合は、それだけでは足りません。
例えば桜の和菓子なら、柔らかな春の光を意識したい。
紅葉なら少し温かみのある光が似合う。
雪を表現した和菓子なら、静けさを感じる余白を活かした構図が美しい。
どんな季節を表現した作品なのかを知ることで、ライティングも背景も構図も自然と変わってきます。
もし何も知らずに撮れば、「ピンク色のお菓子」「緑色のお菓子」で終わってしまうかもしれません。
でも、その背景を理解していれば、一枚の写真から季節の空気まで伝えられるのです。
■ 海外では「季節を食べる」という文化が新鮮に映る
私は海外向けの商品撮影をする機会が多くあります。
海外にも旬の食材を楽しむ文化はありますが、日本のように「季節そのものを表現して味わう」という文化は珍しく感じられることがあります。
だから海外のお客様は、和菓子を見て「これは何の花?」「なぜこの色なの?」と興味を持ってくださることが少なくありません。
そのとき、写真だけでは伝わらない背景があることをいつも感じます。
だから私は、写真を撮る前に、その和菓子が何を表現しているのかをできるだけ理解するようにしています。
海外へ向けて発信する写真だからこそ、日本文化を正しく伝える責任があると思っているからです。
■ フードカメラマンは季節まで撮っている
料理や和菓子を撮る仕事というと、「美味しそうに撮ること」が一番大切だと思われるかもしれません。
もちろん、それは基本です。
でも、和菓子の撮影を重ねるたびに思うのは、本当に撮っているのはお菓子そのものではないということです。
職人さんが表現した季節。
日本人が古くから大切にしてきた四季への感性。
自然の移ろいを愛でる心。
そうした目には見えない文化まで、一枚の写真に込めることができたとき、初めて「日本らしい写真」になるのではないでしょうか。
私はインバウンド・海外展開向けの撮影を数多く担当していますが、海外のお客様が興味を持つのは、単に美味しそうな和菓子ではありません。
その奥にある日本らしい物語です。
だから今日も私は、和菓子だけではなく、その中に込められた「季節」まで撮り続けたいと思っています。
株式会社Light&Green 代表取締役/フードカメラマン 太田笙子

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