アメリカは「シズル感」がすべて。湯気・油のテカリ・盛りすぎくらいでちょうどいい理由
- 笙子 太田
- 2025年12月4日
- 読了時間: 6分
インバウンド向けのメニュー写真を撮っていると、「日本人向けに撮った写真」と「アメリカのお客様向けに刺さる写真」が、驚くほど違うなと日々感じます。
結論から言うと、アメリカ市場では
湯気
油のテカリ
ちょっと“盛りすぎ”なくらいのボリューム感
この3つがそろってはじめて、「This looks so good!(これ、めちゃくちゃ美味しそう!)」と解釈されやすい、という感覚があります。日本の「上品で控えめな美味しさ」とは、まったく別の軸なんですよね。
ここでは、「日本の食を世界に届けるフードカメラマン」として、アメリカ向けに写真を作るときに、どんな“シズル感”を意識しているかをまとめてみます。
■ なぜアメリカは「シズル感」が最重要なのか
アメリカのフード広告やメニュー写真を見ていると、共通しているのは「静かな美しさ」よりも、「勢い」と「ボリューム」の伝わりやすさです。
コントラスト強めの色
大きく・近く・迫ってくる構図
目で見て温度や匂いを想像できるシズル
この3つが、安心感や“お得感”と直結しています。日本の感覚だと「ちょっと脂っこそう」「派手すぎるかな?」と感じるくらいが、アメリカではちょうどいいことが多いです。
「控えめで上品」は、日本では褒め言葉ですが、アメリカの人には
味が薄そう
量が足りなさそう
なんだか物足りない
と受け取られてしまうこともあります。
■ 湯気は「できたて」のサイン
アメリカ向けに温かい料理を撮るとき、湯気はほぼ必須に近い存在です。
ラーメン、スープ、グラタン、ステーキの付け合わせまで、
「湯気が見える=今、できたて」
という視覚情報が、そのまま“美味しそう”に変換されます。
湯気を生かす撮り方のポイントは
少し暗めの背景にする(湯気の輪郭が見えやすくなる)
逆光ぎみに光を当てる(湯気がふわっと浮かび上がる)
本当に熱々の状態でシャッターを切る段取りを組む
こと。
日本向けだと「湯気がなくても、なんとなく伝わるよね」とまとめてしまうことも多いのですが、アメリカ市場向けでは“湯気が写っているかどうか”が、写真の説得力を大きく左右します。
■ 油のテカリ=ジューシーさと満足感
アメリカの人たちは、「油のテカリ」にとてもポジティブです。
ハンバーガーのパティが、照りっと光っている
ピザのチーズの上に、ほんのり油がにじんでいる
フライドチキンの衣が、カリッとツヤっとしている
こうした表現は、日本人の感覚だと「ちょっと脂っこそう」「ヘルシーじゃないかも」と心配されがちですが、アメリカでは
味がしっかりしていそう
満足感がありそう
お金を払う価値がありそう
という「プラスのサイン」になりやすいです。
撮影の現場では、オイルやグレーズを少し足して「光を拾う面」をきちんと作ることもあります。ライトの方向とテカリの位置を細かく調整しながら、「脂っぽくなりすぎない、でもパサついても見えない」ギリギリのラインを探るのがプロの仕事です。
■ 盛りすぎくらいが“ちょうどいい”量感
もうひとつ、アメリカ向けで強く意識したいのが「盛りのよさ」です。
日本人のオーナー様とお話していると、
「そんなに盛ったら、実物より多く見えませんか?」「写真だけ盛り盛りにするのは、なんだか気が引けて…」
というご相談を本当によくいただきます。
ここで大事なのは、
実際の提供量から大きく乖離しないこと
しかし、写真上は“少なめ”に見えないよう工夫すること
この2つのバランスです。
具体的には、
具材を“見える位置”にきちんと配置する
器のサイズを一回り小さくして、相対的に多く見せる
下に野菜やお米を敷いて、上の主役がたっぷり見えるようにする
といった方法で、「ちゃんと入っている」「お腹いっぱいになれそう」という印象をつくっていきます。
アメリカの方は、写真を見て「自分が満腹になる未来」をイメージしています。ボリューム感のない写真は、それだけで候補から外されてしまうこともあるのです。
■ 日本人オーナーがやりがちな“控えめ写真”の落とし穴
インバウンド集客を目指す飲食店や食品ブランドで、よく見かけるのが
彩度低め・優しい色合い
余白たっぷり
油のテカリはあえて消す
量も上品に少しだけ
という、「日本人向けにはとても素敵」な写真を、そのまま英語メニューや海外向けサイトに使ってしまっているケースです。
日本人のお客様には
「センスが良いお店だな」「丁寧な仕事をしていそう」
と伝わる一方で、アメリカのお客様には
量がわからない
味のイメージが湧きにくい
“食欲”よりも“オシャレさ”が勝ってしまう
というギャップが生まれがちです。
インバウンド向けには、同じ料理でも
日本語メニュー用:上品・余白・静けさ
英語メニュー用:シズル・ボリューム・メリハリ
と、ビジュアルを分けて考えるくらいでちょうど良いと感じます。
■ 私がアメリカ向けシズル写真で大事にしている3つのこと
インバウンド・海外進出専門のフードカメラマン、太田笙子として撮影するとき、アメリカのお客様を意識した現場では、特に次の3つを必ずチェックしています。
温度が写っているか 湯気、とろみ、溶けかけのチーズなど、「今この瞬間」の温度を感じる要素をどこに入れるかを決めてから撮影します。
動きがあるか ソースをかける瞬間、麺を持ち上げる瞬間、ピザを引き上げてチーズが伸びる瞬間など、静止画のなかに“一歩手前の動画”のような動きを閉じ込めていきます。
“お腹いっぱい”の未来が想像できるか 1ショットの中で、主食・メイン・具材のボリューム感がきちんと伝わる構図になっているかを、アメリカ人のお客様の目線でチェックします。
アメリカは「シズル感」が最重要。でもそれは決して“下品に派手にする”という意味ではなく、
文化の違いを理解したうえで
相手の「美味しそう」の基準に合わせて
日本の食の魅力を、正直に・気持ちよく伝える
ということだと考えています。
■ インバウンド向けのメニュー写真を見直したい方へ
「アメリカのお客様にもっと来てほしい」「英語メニューの写真だけでも相談したい」
そんな飲食店オーナー様や、食品メーカー・商社のご担当者様とは、具体的なターゲット国や客単価をうかがいながら、
どこまでシズルを出すか
どこからが“やりすぎ”になるか
日本らしさとアメリカ的シズルのちょうどいい折衷案
を一緒に組み立てていくことが多いです。
インバウンド・海外展開向けのフードフォトについて相談してみたい方は、こちらからお気軽にお問い合わせください。
お問い合わせフォーム:https://www.foodphoto-shoko.com/contact






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