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AIの料理写真を見て思った。そもそもメニュー写真は何のためにある?

  • 執筆者の写真: 笙子 太田
    笙子 太田
  • 5 日前
  • 読了時間: 7分

こんにちは。

インバウンド・海外展開に特化したフードカメラマン、太田笙子です。


先日、ITmedia NEWSで、とても興味深い記事を読みました。

生成AIで作られたとみられる飲食店のメニュー写真について、SNS上で「食欲が削がれる」「実物を見たい」といった声が上がっている、という内容です。


記事によると、話題になった画像では、白米の粒や衣の凹凸が過度に強調されていたり、料理に不自然な光沢があったり、チーズが不自然なほど伸びていたりと、独特の「AIっぽさ」が見られたそうです。


一方で、生成AIそのものが悪いという話でもありません。条件を細かく指定すれば、かなり実写に近い料理画像を生成することもできます。

それでも私はこの記事を読みながら、AIの技術とは少し違うところが気になりました。

「そもそも、メニュー写真って何のために載せるんだろう?」

ということです。



「こんな料理があります」が伝わればいい?

飲食店のメニュー写真には、もちろん情報としての役割があります。

「この店にはハンバーグがあります」

「この定食には、ご飯と味噌汁が付いてきます」

「このパフェには、いちごとアイスクリームが入っています」

文字だけで説明するよりも、写真を見せた方が圧倒的に早い。


特に外国人のお客様にとっては、料理名だけではどんな料理なのか想像できないこともあります。

その意味では、メニュー写真には「事実を視覚的に伝える」という大切な役割があります。

今回の記事に登場したAI画像についても、もしかするとお店側としては、

「美味しそうに見せたい」

という広告的な目的より、

「こんなメニューがあります」

「だいたいこんな料理です」

という情報を伝えるために使っていたのかもしれません。

ただ、ここで少し不思議なことが起こります。



「事実確認」が目的なのに、写っている料理が実物ではない

例えば、唐揚げ定食の写真を見たとします。

私たちは無意識のうちに、その写真からかなり多くの情報を受け取っています。

唐揚げは何個くらいあるのか。

どのくらいの大きさなのか。

キャベツは添えられているのか。

ご飯や味噌汁は付いているのか。


つまり、「この料理を注文すると、こんなものが出てくる」という判断材料として写真を見ているわけです。

ところが、その写真が実際の料理を撮影したものではなく、生成AIが作った架空の唐揚げ定食だったらどうでしょう。

「何が出てくるのか確認するための写真」なのに、写っているものは実物ではない。

少し矛盾していますよね。


ITmedia NEWSの記事でも、AIの使用そのもの以上に「実物と異なる画像をもとに食事を選ばなければならない」というユーザー体験を問題視する声が紹介されています。

私はここに、料理写真ならではの難しさがあると思っています。



メニュー写真には「情報」の先の仕事がある

もう一つ考えたいのが、広告としての写真の役割です。

例えば、

「ラーメンがあります」

という情報を伝えるだけなら、料理名と簡単な説明だけでも目的は果たせます。


でも写真を載せるなら、できればもう一歩先まで働いてほしい。

湯気が立っている。

スープの表面に脂がきらっと光っている。

箸で持ち上げた麺にスープが絡んでいる。

チャーシューの脂がとろっとしている。

そんな写真を見た瞬間、

「ラーメンがある」

という情報が、

「このラーメン、食べたい」

という感情に変わります。

私は、ここに広告写真の大きな役割があると思っています。


私自身、フードカメラマンとして料理を撮影するとき、「料理が写っていればOK」と考えることはほとんどありません。

その写真を見た人に、

「美味しそう」

「食べてみたい」

「この店に行ってみたい」

と思ってもらえるか。

写真を見た後に、人の気持ちがどこへ動くのかまで考えて撮影しています。


以前、インバウンド向けの写真について資料を作ったときにも、写真を単なる説明ではなく、認知から興味、比較、欲求、そして来店・購入へとつながるビジュアルコミュニケーションとして整理しました。

メニュー写真も同じです。

「何があるのか」を伝えるだけで終わるのか。

「これが食べたい」まで連れていくのか。

同じ料理写真でも、目的によって果たす仕事はかなり違います。

AIがもっと上手になったら、この問題はなくなるのか?

ここで、もう一つ考えてみたいことがあります。

今回話題になったのは、「AIっぽい料理写真」に対する違和感でした。

でも、この問題はずっと続くのでしょうか。

おそらく生成AIはこれからさらに進化します。

数年どころか、もっと早い段階で、プロが撮影した写真と見分けるのが難しいほど「美味しそうな料理画像」が簡単に作れるようになるかもしれません。

そうなったとき、

「AI画像は美味しそうに見えないからダメ」

という議論は成立しなくなります。

では、

実際には存在しないけれど、ものすごく美味しそうなハンバーグの画像。

実物より肉厚で、肉汁がたっぷり出ていて、焼き色も完璧。

そんな画像がAIで作れるようになったら、メニューに使ってもいいのでしょうか。

ここからは、写真の上手い・下手とはまったく違う問題になってきます。



「美味しそう」と「本当に出てくる」の間にあるもの

広告写真には、商品を魅力的に見せる役割があります。

だから私たちフードカメラマンも、光を作り、器を選び、盛り付けを整え、その料理が最も魅力的に見える瞬間を撮ります。

実際に目の前にある料理を、そのまま何も考えずに記録しているわけではありません。

では、どこまで魅力的に見せていいのか。

どこからが「実際の商品とは違う」になるのか。

AIによって、この境界線はこれからますます重要になってくると思います。

特に料理は、画像そのものを買うわけではありません。

写真を見て注文し、その後に実物の料理が運ばれてきます。

だからこそ、

「美味しそうだったから注文した」

の次に、

「写真で見た料理がちゃんと出てきた」

という体験が必要なのではないでしょうか。

広告写真には「期待をつくる」という仕事があります。

同時に、その期待と実物をつなぐ仕事もあるのだと思います。



AIか、実写か。その前に考えたいこと

今回の記事を読んで、改めて感じました。

これから料理写真について考えるとき、

「AIを使うべきか」

「プロに撮影を頼むべきか」

という二択から考え始めるのは、少し違うのかもしれません。

その前に考えるべきなのは、

「この写真は何のために存在するのか?」

ということです。


メニューの内容を正確に伝えたいのか。

初めてのお客様の不安をなくしたいのか。

美味しそうと思ってほしいのか。

この料理を注文したいと思ってほしいのか。

Instagramで店を知ってほしいのか。

外国人のお客様にも料理の魅力を理解してほしいのか。


目的が変われば、必要な写真も変わります。

そして、「美味しそうに見せること」が目的なら、ただ料理らしい画像を作ればいいわけではありません。

照り、湯気、断面、温度感、食感、ボリューム、器、光。

何を見せれば、その料理を食べたときの体験まで想像してもらえるのか。

そこを設計することが、フードカメラマンの仕事だと思っています。



写真は「料理があります」を「この料理が食べたい」に変えられる

メニュー写真は、単なる料理の説明書ではありません。

「こんな料理があります」

を伝えることもできる。

「美味しそう」と感じてもらうこともできる。

そして、

「この料理を食べたい」

「この店に行きたい」

という行動につなげることもできます。


だから私は、AI料理写真の是非を考える前に、

「その写真に、どんな仕事をさせたいのか?」

を考えることが大切なのではないかと思っています。

AIでも、スマートフォンでも、プロの撮影でも。

写真を作る方法はこれからどんどん増えていくでしょう。

でも、写真を見た人に何を伝え、どう感じてもらい、どんな行動をしてほしいのか。

その目的を決める仕事は、なくならない。

むしろ、簡単に「それっぽい写真」を作れる時代になったからこそ、これまで以上に重要になるのかもしれません。



参考:ITmedia NEWS「『食欲が削られる』――AIで作られた“気色の悪い飲食店メニュー”がXで物議 『実物を見たい』の声も」(2026年8月18日公開)



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