料理は音でも美味しくなる〜なぜポテトチップスの「パリッ」は食欲を刺激するのか〜
- 笙子 太田
- 6月23日
- 読了時間: 4分
こんにちは。インバウンド・海外展開特化のフードカメラマン、太田笙子です。
突然ですが、想像してみてください・・・
ポテトチップスを一枚口に入れます。
「パリッ」
という音が聞こえます。
次に、しけってしまったポテトチップスを食べます。
「ふにゃっ」
どうですか?
同じ味がしますか・・・?
ちなみに私はしないです・・・。
実際、ポテトチップスそのものの原料や味付けはほとんど変わっていない場合でも、私たちは音によって美味しさを判断しています。
つまり、人は舌だけで食べているのではありません。
耳でも食べているのです。
美味しさは五感で作られている
以前このブログで、
目隠しをすると味が感じにくくなる話。
高級レストランが照明を暗くする理由。
器の色によって味の感じ方が変わる話。
などをご紹介してきました。
実は音も同じです。
人間の脳は、
味覚、視覚、嗅覚、触覚、聴覚
をまとめて処理し、「美味しい」という体験を作っています。
だから料理そのものが同じでも、聞こえる音が違うだけで評価が変わることがあるのです。
なぜ揚げたての天ぷらは美味しそうなのか
天ぷら屋さんのカウンターに座ると、「ジュワ〜」という揚げる音が聞こえてきます。
そして口に入れた瞬間、「サクッ」という軽快な音が響きます。
この時点で、私たちの脳はすでに「美味しい」と判断し始めています。
もし同じ天ぷらでも、「ベチャッ」という音だったらどうでしょう。
おそらく味を確認する前から評価は下がってしまうはずです。
音は食材の状態を伝える重要な情報なのです。
ビールが美味しそうに見える理由
最近暑くなってきて増えてきたビールのCMを思い出してみてください。
プルタブを開ける音。
グラスに注がれる瞬間、シュワシュワと泡が立ちます。
炭酸がはじける音。
ジョッキを置く音。
喉を鳴らして飲む音。
これらはすべて計算されています。
もし無音だったらどうでしょう。
同じビールでも魅力は半減してしまうかもしれません。
私たちは炭酸の刺激を味わう前から、「シュワッ」という音で爽快感を想像しているのです。
レストランは音もデザインしている
面白いことに、高級レストランでは音も演出されています。
静かな店内。
食器が触れ合う小さな音。
ワインを注ぐ音。
これらは料理を引き立てるBGMのような役割を果たしています。
逆にフードコートやファストフード店では、活気のある環境音が流れています。
どちらが良い悪いではありません。
その店が提供したい体験に合わせて音が設計されているのです。
フードカメラマンは音のない世界で仕事をしている
ここで少し、私の仕事の話をさせてください。
写真には音がありません。
動画なら「サクッ」も「シュワッ」も伝えられます。
でも写真は無音です。
だからフードカメラマンは、音が聞こえない写真の中で音を想像させなければなりません。
例えば、
揚げたての天ぷらなら衣の立ち方。
ポテトチップスなら割れた断面。
ビールなら泡の細かさ。
炭酸の気泡。
こうした視覚情報から、
「サクッ」「パリッ」「シュワッ」
を感じてもらうのです。
以前、「音が聞こえる写真は売上につながる」という記事を書きました。
まさにこれは、人が耳でも食べているからです。
音を想像できる写真は、脳の中で美味しさを再生してくれるのです。
海外向け写真ではさらに重要
インバウンド向けの撮影では、この考え方がさらに重要になります。
なぜなら海外のお客様は料理を食べる前に、まず写真を見るからです。
写真は世界共通の言語です。
言葉が通じなくても、湯気、断面、泡、肉汁など。。。
こうした情報は伝わります。
だから私は海外向けの撮影でも、「どんな味か」だけではなく、
「どんな音がするか」まで想像できる写真を目指しています。
まとめ
ポテトチップスの「パリッ」。
天ぷらの「サクッ」。
ビールの「シュワッ」。
私たちは音から美味しさを感じています。
つまり食事とは、舌だけの体験ではありません。
目でも。耳でも。鼻でも。
そして記憶や感情でも味わっています。
だからこそ料理写真も、単に綺麗に撮るだけでは足りません。
音が聞こえてくるような一枚。
その先に、「食べたい」という感情があります。
私たちフードカメラマンの仕事は、料理を撮ることではなく、その体験を写真に翻訳することなのかもしれません。
#食に物語を。
フードカメラマン太田笙子
【参考情報】
2023年以降の感覚科学研究では、食品の咀嚼音や炭酸音などの聴覚情報が、食感や鮮度、美味しさの評価に影響することが確認されています。また「クロスモーダル知覚」と呼ばれる分野では、聴覚と味覚が相互に影響することが広く研究されています。



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