和菓子は"正面"を間違えると伝わらない
- 笙子 太田
- 8月2日
- 読了時間: 4分
こんにちは。
インバウンド・海外展開特化のフードカメラマン、太田笙子です。
「和菓子に正面なんてあるの?」
そう思った方も多いのではないでしょうか?
私もフード撮影の仕事を始めるまでは、そこまで深く意識したことはありませんでした。
先日、和菓子の撮影をしていたときのことです。
お皿の向きや懐紙の折り方を確認しながら準備を進めていると、「この和菓子は、こちらが正面です」と教えていただきました。
その瞬間、改めて感じたのです。
和菓子は「食べ物」である前に、「作品」でもあるのだと。
そして、その作品を写真に残すのであれば、作り手が見せたい姿を理解して撮ることがとても大切なのだと実感しました。
■ 和菓子には「見せたい向き」がある
洋菓子は360度どこから見ても美しく見えるように作られることが多いですが、和菓子には正面が意識されているものが少なくありません。
例えば、桜を表現した練り切りなら花びらが一番美しく見える向きがあります。
紅葉を表現したものなら、葉脈の流れや色の重なりが最も映える角度があります。
羊羹や上生菓子でも、職人さんは「お客様が最初に見る面」を考えながら細部まで仕上げています。
つまり、和菓子には「ここを見てほしい」というメッセージが込められているのです。
それは絵画を額縁ごと逆さまに飾らないのと同じくらい自然なことなのかもしれません。
■ 写真は、作り手の想いを翻訳する仕事
フードカメラマンの仕事は、料理やお菓子をただ綺麗に撮ることではありません。
作り手が何を伝えたかったのかを理解し、その魅力を写真という形で見る人へ届けることです。
もし正面を知らずに撮影してしまえば、本来一番美しい表情を見逃してしまうかもしれません。
もちろん、一般の方がSNSに投稿する写真でそこまで気にする必要はないでしょう。
しかし、お店のホームページやパンフレット、海外向けのECサイト、広告写真となると話は別です。
職人さんが何時間もかけて作り上げた作品の魅力が半分しか伝わらなければ、とてももったいないことです。
■ 海外のお客様ほど「写真」が第一印象になる
私は海外向けの商品撮影を数多く担当していますが、海外のお客様は実物を見る前に写真だけで商品の印象を判断する場面が非常に多くあります。
特に和菓子は、日本文化を知らない方にとっては初めて見るものばかりです。
だからこそ、「どの向きで見せるか」が、日本人以上に重要になります。
職人さんが表現した季節感や物語、美意識まで写真で伝えられるかどうか。
その違いが、「美しい日本のお菓子」と感じてもらえるか、「よく分からないお菓子」で終わってしまうかを左右することもあります。
インバウンドや海外展開では、写真は商品の説明書でもあり、日本文化を伝える翻訳者でもあるのです。
■ 知れば知るほど、日本の食文化は奥深い
以前は懐紙の折り方にも慶事と弔事で違いがあることを学び、「知らなかった」では済まされない日本文化の奥深さを感じました。
そして今回、和菓子にも正面があることを改めて教えていただきました。
撮影の現場では、ライティングや構図ばかりが注目されがちです。
でも、本当に大切なのは、その料理やお菓子が生まれた背景や文化を理解することなのではないでしょうか。
そうした知識があるからこそ、一枚の写真に説得力が生まれます。
■ 写真は、文化まで届けるもの
私はフードカメラマンとして、「美味しそう」を撮ることはもちろんですが、その料理やお菓子の背景にある文化まで伝えられる写真を目指しています。
和菓子の正面は、ほんの少し向きを変えるだけの話かもしれません。
でも、その少しの違いには、職人さんの想いと日本人ならではの美意識が詰まっています。
写真とは、単に形を写すものではありません。
作り手の想いを受け取り、それを次の誰かへ届ける仕事なのだと、和菓子の撮影現場で改めて感じました。
日本の食文化には、まだまだ世界へ伝えるべき魅力がたくさんあります。
だから私は今日も、料理だけではなく、その背景にある物語まで写し続けたいと思っています。



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