フード撮影は「料理を壊す仕事」でもある〜 料理写真の裏側 〜
- 笙子 太田
- 3 日前
- 読了時間: 4分
こんにちは、フードカメラマンの太田笙子です。
フード撮影の現場で、ふとこんなことを思う瞬間があります。
「あ、いま私、この料理を壊しているかもしれない」
少し過激な言い方かもしれません。
でも、撮影の仕事を続けていると、確かにそう感じる瞬間があるのです。
今日は、料理写真の「裏側」について正直にお話しします。
■ 料理は本来、食べるためにある
当たり前のことを言うようですが、料理って食べるためのものですよね。
温かいうちに、香りを楽しみながら、作りたてを口にする。料理人はそのために、朝から仕込みをして、ソースを何時間も煮詰めて、盛り付けに心を込めています。
でもフード撮影では、その流れを「いちど止める」ことになります。
カメラを構えた瞬間から、料理は「食べるもの」ではなく「見せるもの」に変わる。
そのことを、私はいつも頭の片隅に置いています。
■ 撮影現場でやっていること
では実際に、撮影現場でどんな調整をするのか。
角度を変えたり、皿の向きを微調整したり。
断面を見せるために料理を一部崩すこともあります。
ソースを少し足して流れを作ったり、高さを整えるために素材の位置を動かすことも。
ひとことで言えば、「写真のために料理を動かす」のです。
これを初めて見たお客さまは、驚くことがあります。
「え、そこまでするんですか?」と。
でも、これは料理を雑に扱いたいわけじゃない。
むしろ逆で、料理の魅力を最大限に伝えたいからこそ、一枚の写真に全力を注いでいます。
■ 「壊す」のではなく、「伝える」ための調整
断面を見せれば、食感が伝わります。
チーズのとろけ具合、お肉のジューシーな断面、スポンジケーキのきめの細かさ。
カットする前には絶対に見えないものが、一枚の写真で伝わる。
高さを整えれば、立体感が生まれます。
平面の写真でも、料理に奥行きを感じさせることができる。
ソースに流れを作れば、シズル感が出ます。
「今まさに出来立て」という熱量が、静止画に宿る瞬間です。
こうした積み重ねで、料理の魅力がより豊かに伝わる一枚になっていく。
それがフードカメラマンの仕事だと思っています。
■ この仕事が「意味を持つ」理由
少し視野を広げると、この仕事の背景にある大きな流れが見えてきます。
株式会社ファンくるが2023年2月に実施した調査(有効回答数996名)によると、SNSをきっかけに飲食店を知ったことがある人は83%、そのなかで実際に来店した人は84%にのぼりました。
来店の理由として最も多かったのが「料理やドリンクの写真や動画が魅力的だったから」という回答です。(出典:株式会社ファンくる「飲食店におけるSNSについての意識調査」2023年)
つまり、写真が来店の入り口になっている。
さらにCOLLINS株式会社が2024年11月〜2025年1月に実施した調査(300名対象)でも、
飲食店を知るきっかけとしてInstagramの重要性が増している一方で、
「Instagramで認知しただけでは来店まで繋げることが難しい」という実態も明らかになっています。(出典:COLLINS株式会社「飲食店の選び方」調査 2025年)
認知から来店へ。
そのギャップを埋めるのが、コンテンツの訴求力、つまり「写真の質」だと私は考えています。
■ 料理人との信頼関係が、すべての土台
だからこそ、フード撮影では料理人との信頼関係がとても大切です。
料理人が丁重に作ったものを尊重しながら、写真として最も魅力的な状態を引き出す。
それは、お互いが同じゴールを向いているからこそできることです。
「もっと美味しそうに見せたい」
「もっと多くの人に届けたい」という思いが一致したとき、現場はとても気持ちのいい場所になります。
料理撮影は、料理人とカメラマンが一緒に作り上げる共同作品です。
料理の価値を、より多くの人に届けるために。
私が撮影のたびに「壊しているかもしれない」と思うのは、それだけ料理人の仕事を尊重しているから。
そしてその先にある、見てくれる人の「食べたい」という気持ちに、ちゃんと応えたいと思っているからです。
■ プロフィール
太田笙子(おおた しょうこ)/フードカメラマン 飲食店・食品メーカー・ECサイト向けの料理・食品撮影を専門とする。商業撮影における視覚表現の役割について、継続的に発信している。
料理撮影・食品撮影・商品撮影のご相談は、お気軽にどうぞ。



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