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そのAI料理写真、大丈夫?飲食店が知っておきたい「行政処分」のリスク

執筆者の写真: 笙子 太田
笙子 太田
8月20日
読了時間: 8分

こんにちは。

インバウンド・海外展開に特化したフードカメラマン、太田笙子です。

最近、飲食店のメニューや広告でも、生成AIで作られた料理画像を見かけるようになりました。


「撮影するほどでもないから、とりあえずAIで作ろう」

「SNSに載せるだけだから」

「無料で作れるし、イメージ画像として使えばいいよね」


そんな感覚で使っている方もいらっしゃるかもしれません。

実際、生成AIはとても便利です。

以前なら、料理を作り、盛り付け、カメラマンを呼び、撮影しなければ作れなかった画像が、今では文章を入力するだけで数分で出来上がります。

しかも無料で利用できるサービスまであります。

だからこそ、私は少し怖いとも感じています。

作るハードルがあまりにも低いため、

「その画像を広告に使うことには責任が伴う」

というところまで考えずに公開できてしまうからです。



飲食店のメニュー写真も「広告表示」です

まず知っておきたいのが、飲食店のメニューやPOP、ポスターなどの表示は、景品表示法と無関係ではないということです。

消費者庁は、店内・店頭のメニューや看板、ポスターなどの表示も景品表示法の対象になると説明しており、景品表示法違反被疑情報提供フォームで情報提供を受け付けています。


つまり、

「店内のメニューだから広告ではない」

「Instagramに載せただけだから大丈夫」

と単純に考えることはできません。

消費者が「何を注文するか」「どの店を選ぶか」を判断するための表示である以上、その内容が実際の商品とどう対応しているのかが重要になります。



問題になる可能性があるのが「優良誤認」

ここで関係してくるのが、景品表示法の「優良誤認表示」です。

消費者庁によると、商品やサービスの品質、規格その他の内容について、

実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示

などは禁止されています。


例えば、実際に提供されるステーキは120gなのに、AIで生成した画像では300gほどありそうな巨大なステーキになっていたら。

実際には小さな海老が数尾なのに、AI画像では大ぶりの海老が皿いっぱいに盛られていたら。

実際には一般的なチーズの量なのに、AIによって大量のチーズがあふれ出しているようなピザになっていたら。

実際の商品との違いの程度や表示全体の受け取られ方によるため、これだけで直ちに違法だと断定することはできません。


しかし、AIで生成したビジュアルだからといって、景品表示法を考えなくてよいわけではありません。

消費者庁は、商品やサービスの内容について実際より著しく優良であると示し、消費者の合理的な選択を阻害するおそれのある表示を禁止しています。

そして、ここにはかなり重要なポイントがあります。



「騙すつもりはなかった」でも安心できない

私が飲食店の方に特に知ってほしいのは、ここです。

消費者庁は優良誤認について、

「故意に偽って表示する場合だけでなく、誤って表示してしまった場合であっても」

該当する場合には景品表示法による規制対象になると説明しています。


つまり、

「AIが勝手に大きくしてしまった」

「そんなつもりで生成したわけではなかった」

「よく確認せずInstagramに投稿してしまった」

という事情があったとしても、それだけで問題がなくなるとは限らないのです。


生成AIでは、指示していないものが追加されたり、食材のサイズや量が変わったり、現実にはあり得ないほどツヤやボリュームが強調されたりすることがあります。

だからこそ、

「AIが作った画像だから」

ではなく、

「自社が広告として公開する画像だから」

という意識でチェックする必要があります。



違反すると「画像を消せば終わり」とは限らない

では、景品表示法に違反するとどうなるのでしょうか。

消費者庁によると、不当表示の疑いがある場合には、資料収集や事業者への事情聴取などの調査が行われます。

違反が認められれば、「措置命令」が行われることがあります。

そこでは、不当表示によって生じた誤認を取り除くこと、再発防止策を講じること、今後同じ違反を行わないことなどが命じられます。

さらに、一定の要件を満たす場合には課徴金納付命令の対象となることもあります。

2025年度(令和7年度)には、消費者庁が景品表示法に基づいて13件の措置命令、10件の課徴金納付命令を行い、課徴金額は合計3億3940万円でした。

また、388件の指導も行われています。

「広告画像をちょっと盛っただけ」

で済む話ではないことが分かります。



実際に「料理」に対する措置命令も出ています

ここも、飲食店の方には知っていただきたいところです。

2025年10月、消費者庁は「出張カキ小屋 牡蠣奉行」というイベントで提供された「宮城県産 カキ一盛り(約1kg)」と称する料理に関する表示について、景品表示法違反を認定し、運営会社に措置命令を行っています。

この事例はAI画像に関するものではなく、問題となったのも有利誤認表示です。

ですから、

「AI料理画像でも同じ処分が行われた」

という事例ではありません。

ただ、重要なのは、

「飲食店や料理の表示も、実際に景品表示法の執行対象になっている」

ということです。

AIで作った画像だから、広告表示のルールから外れるわけではありません。



AI画像そのものが悪いわけではない

ここまで書くと、

「では飲食店はAI画像を使ってはいけないの?」

と思われるかもしれません。

私は、そういう話ではないと思っています。

例えば、新店舗のコンセプトを社内で共有するためのイメージ。

撮影前の構図を検討するための参考ビジュアル。

まだ存在していない新商品の企画段階で使うイメージボード。

こうした用途では、生成AIは非常に便利です。

問題は、

「実際の商品を見せているように受け取られる場所」

で使う場合です。

特にメニュー、店頭POP、デリバリーサイト、ECサイト、広告、SNSなど、画像を見た消費者が購入や注文を判断する場所では慎重になる必要があります。



「AI生成」と書けば何でも大丈夫、でもない

では、「画像はAIによるイメージです」と書いておけば問題ないのでしょうか。

ここも単純ではありません。

景品表示法では、個別の注記だけを見るのではなく、表示全体から一般消費者がどう認識するかが重要になります。

そのため、小さく「イメージです」と書けば、実際とは大きく異なる料理画像を自由に使える、と考えるのは危険です。


例えば、実物よりはるかに豪華な海鮮丼を大きく掲載し、その横に小さく「画像はイメージです」と書いた場合。

消費者がその画像を見て商品内容を判断するのであれば、注記があるから必ず問題ない、とは言い切れません。

AIを使ったかどうか以上に、

「その表示を見たお客様が、実際の商品についてどんな認識を持つのか」

を考える必要があります。



「無料で作れる」と「無料で使える」は違う

私はここが、生成AI時代の広告でとても重要なポイントだと思っています。

AIなら画像制作費はほとんどかからないかもしれません。

撮影場所もいらない。

料理を作る必要もない。

カメラマンもスタイリストも必要ない。

数分で、美味しそうな料理画像が完成します。

制作コストだけを見れば、非常に魅力的です。


でも、

「無料で簡単に作れる」

ことと、

「リスクなく広告に使える」

ことはまったく別です。

広告として公開する以上、その表示について責任を持つのは事業者です。

生成したのがAIだからといって、その責任までAIに任せることはできません。



AI時代だからこそ「実際の商品を撮る」意味を考えたい

私はフードカメラマンなので、もちろん実際の商品を撮影しています。

だからといって、

「AIではなく、全部プロに撮影を頼みましょう」

と言いたいわけではありません。


AIにはAIが向いている用途があります。

スマートフォンで十分な写真もあります。

そして、きちんと撮影した方がいい写真もあります。

大切なのは、使い分けです。


特に、

「この写真を見て、お客様がお金を払う」

という場所に掲載する画像については、

実際の商品と一致しているか。

量やサイズが過剰に見えていないか。

実際には使っていない食材が生成されていないか。

提供時の盛り付けとかけ離れていないか。


そして何より、

「この画像を見て注文したお客様が、実物を見たときにどう感じるか」

まで考えてほしいと思います。

AIが悪いのではありません。

問題は、簡単に作れるからこそ、簡単に公開してしまえることです。

写真や画像は「飾り」ではありません。

お客様が商品を選ぶための情報です。

そして広告として世の中に出した瞬間、その情報には責任が伴います。


AIで料理画像を作れる時代になった今だからこそ、

「この画像、本当に広告に使って大丈夫?」

と、一度立ち止まって考えること。

それが、これから飲食店がAIとうまく付き合っていくために必要なのではないでしょうか。



参考資料(すべて2025年以降に公表・更新された消費者庁資料)

消費者庁「優良誤認とは」

消費者庁「景品表示法違反行為を行った場合はどうなるのでしょうか?」

消費者庁「令和7年度における景品表示法等の運用状況及び表示等の適正化への取組」

消費者庁「LH株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について」(2025年10月10日)

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別案件についての法的助言ではありません。実際の広告表示について判断が必要な場合は、弁護士等の専門家または関係行政機関への確認をおすすめします。



インバウンド・海外展開を見据えた飲食店・食品メーカーのフード撮影については、フードカメラマン 太田笙子までお気軽にご相談ください。


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